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脱・ワンオペ育児(上)母向け講座で「イクメン養成」
「話し合いが大切」
主に母親が1人で育児と家事を負担するワンオペ育児。「男性は外で働き、育児と家事は女性がやる」という意識はいまだに根強いが、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回っている現状では、夫婦の協力が欠かせない。
埼玉県新座市や東京都練馬区で子育て支援を行うNPO法人「新座子育てネットワーク」は、父親が育児を理解し、積極的に取り組むための講座を開設している。
同法人は母親向けに「イクメン」養成講座を開講している。父親が育児をする大切さを母親が認識し、夫婦ともに子育てを見つめ直すことを目的に、2013年にスタートした。
7月下旬、練馬区で開かれた講座「パパの気持ち ママの気持ち」には、子連れの母親たち約10人が参加した。スタッフは子どもをあやしながら座る母親たちに、父親の育児や夫婦関係に関するチェックシートを配布。続いてスタッフが、クイズ形式で父親の育児に関するデータを紹介。夫の子育ての情報源で最も多かったのは妻だという調査結果や、夫の70%以上が子どもとの時間を十分に取れていないと感じていることなどを紹介した。
終了後、スタッフが受講した感想を尋ねると、「うちのパパはよくやってくれていると思う」などと答える母親がいる一方で、「普段は私一人で子育てしている」「一緒にいる時間が短く子どもの成長を見ていない分、子どもに何をしてあげればいいのかが分かっていない」といった不満も出た。30代の女性は「自分が求めることを夫ができないことが耐えられなかった。してほしいことをきちんと伝えられれば安心できると思う」と話した。
同法人は、父親の育児を支援する「お父さん応援プログラム」も展開している。坂本純子代表理事は「かつては子育てをする母親向けの支援はあっても、父親向けの支援はなかった」と話す。
このプログラムは04年にスタート。きっかけは坂本代表理事がカナダを視察したこと。カナダでもかつては男性は外で働き、女性が育児というのが一般的だったが、女性が社会に進出する動きが広がり、育児も夫婦で行う必要に迫られていた。坂本代表理事がカナダを訪れた当時は、すでに父親向けのプログラムが開発されており、これを日本向けにアレンジした。
プログラムでは、育児に関わる父親たちのインタビュー動画を視聴したり、自治体など妻以外に子育てをサポートしてくれる機関を調べたり、子どもにとって父親が果たす役割を説明したりする。同法人は、このプログラムを受講した父親たちを誘い、流しそうめんや餅つき大会などのイベントも企画。準備やイベント当日の運営は父親たちに任せている。参加者は今も「お父さん盛り上げ隊」として活動する。
プログラムを受講した木村修さん(45)は、3人の子の父親。子どもが幼い時、育児は専業主婦だった妻の役割。木村さんも家事はこなしていたが、「妻から子どものことで『大変だった』と言われても、日中、家にいないので大変さが分からなかった」と振り返る。
坂本代表理事は「男性が外で働き、女性が育児をするという考え方は長い時間がかかって根付いた。今は変化の時で、こうした考えから脱却するにはまだ時間がかかる」と指摘したうえで、「幸せな家庭を作るためにも、夫婦で話し合って互いにいたわることが必要だ」と話している。
負担認識 夫婦でズレ…夫「自分は3割以上」 妻「夫は2割以下」
明治安田生活福祉研究所が今年3月に行った調査では、夫の育児や家事について、夫婦間の認識のズレが浮かび上がった。
夫婦ともに正社員である共働き世帯に対し、家事や育児について理想とする夫の負担割合を尋ねたところ、夫婦とも「5割」とする答えが最も多かった。
ところが、現実の負担割合に対する認識では、夫は「3割」という回答が25.5%と最も多く、次いで「5割」が24.4%。7割近くの夫が自分は育児や家事の3割以上を負担していると答えた。これに対し、妻の認識をみると、夫の実際の負担は「1割以下」が30.1%、「2割」が28.2%と、6割近くが夫は2割以下しか負担していないと考えており、夫婦で大きなギャップがみられた。
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