子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
不慮の事故(8)お風呂浮輪外れ、溺れる
不慮の事故では、小児科医で緑園こどもクリニック(横浜市)院長の山中龍宏さん=写真=に聞きます。(聞き手・萩原隆史)
幼い子をお風呂に入れていて、ヒヤッとした経験はありませんか。浴槽で子どもが溺れる事故は、今も昔も不慮の事故の多くを占めています。中でもリスクが高いのは、浴槽で使われる乳幼児用の浮輪です。
浮輪の真ん中の穴の部分に、子どもが足を通して座れるシートを取り付けたタイプは「パンツ型浮輪」とも呼ばれます。
ある日の夜、この浮輪を使って生後9か月の男児と一緒に入浴中の母親が、洗髪で少し目を離した際、声がしなくなったのに気付きました。見ると、男児が浮輪から外れ、うつぶせで浴槽に浮かんでいました。
すぐに人工呼吸をして救急車を要請。男児は集中治療室に入りました。発見と処置が早かったため、翌日には普段通りに母乳を飲めるまで回復しましたが、事故直後は呼吸が一時的に止まるなど危険な状態でした。
同種の事故報告はいくつも寄せられていますが、その多くは、親が洗髪で3分前後、目を離したすきに起きています。本来、親の監視下で使うものですが、どちらかというと、入浴中に親がちょっと目を離せる便利グッズとして扱われることが多いのではないでしょうか。
子どもの事故が起きた場合、多くの人が口にする言葉があります。「親の責任」「親の不注意」「親が悪い」――です。けれど、親を非難するだけで事故が減るわけではないし、注意喚起だけでも防げません。この製品に限らず、事故が繰り返されるケースは少なくありません。
事故を科学的に分析し、具体的な防止策を考え、実行することが重要です。浮輪による事故についても、転覆の仕組みを詳しく検証したところ、危険の本質が見えてきました。
次回、検証結果を紹介します。
【略歴】
山中龍宏(やまなか・たつひろ)
1947年、広島市生まれ。小児科医。東京大医学部卒。子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフ キッズ ジャパン」(東京)理事長、消費者庁の消費者安全調査委員会専門委員。
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