心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
自分の症状は「病気」?「障害」?…あいまいな「境界線」、どう受け止めればいい?
「いつまでも健康な体で生活したい」と思っていても、年齢を重ねる中で、体に不調を感じたり、何らかの不都合な状態が起きたりします。そして病院に行くと、医師から「病気」や「障害」などと告げられることになります。
ところで、この二つの言葉の意味の違いについて、みなさんはご存じでしょうか。
「眼球使用困難症」患者たちの訴え…突きつけられた課題
私が顧問をしている患者たちの会の一つに、「眼球使用困難症と闘う友の会」があります。この団体が先日、視覚障害の認定を受けられずに不自由な生活を送っている実情を訴えるために、自民党障害児者問題調査会の衛藤晟一会長と面会しました。私も医学的な説明のために同行しました。
衛藤議員からは、「国の福祉政策は病気(難病)と障害の2本立てになっているので、どちらの対策を求めるのかを明確にしたほうがよい」とのアドバイスをもらいました。
「なるほど」とうなずけましたが、「友の会」のメンバーや私にとっては、難しい課題を突きつけられた形となりました。
「病気」「障害」と言われたら…反応は様々
実は、医療の現場から見ると、「病気」と「障害」の厳密な区別は難しいのです。
たとえば、単なる近視や乱視を「病気」と思う人はあまりいないと思います。しかし、カルテの上では立派な傷病名です。
私は患者さんに「あなたは進行性の強度近視です。これは病的近視ともいわれ、さまざまな眼球の異常を合併症として引き起こす可能性があります」と説明することがあります。すると、「えっ、近視って病気だったの?」と驚かれることは決して珍しくはないのです。
「病気」と言われて、がっかりする人がいる一方で、「そうか、病気だから調子が悪かったのか」と納得する人もいます。反応は人それぞれです。
障害もそうでしょう。「障害とは、おそらくこれ以上有効な治療方法がなく、健康な人に備わるべき機能が欠けて回復しない状態」と考えると、自身が障害を持って 愕然 として、なかなかそれを受け入れられない人もいると思います。
一方で、障害者と認定されれば、様々な公的支援の対象になるため「よかった」と感じる場合もあるのです。
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