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カテーテル治療で僧帽弁修復…クリップで血液逆流防ぐ

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カテーテル治療で僧帽弁修復…クリップで血液逆流防ぐ
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 閉まりにくくなった心臓の「僧帽弁」を、血管から入れたカテーテル(管)を使って修復する治療が登場し、今年4月から保険が利くようになった。心機能の低下や高齢で外科手術が難しい人に治療の道を開くもので、千葉県市原市の男性(76)は先月、この治療を受けて順調に回復している。(森井雄一)

心不全状態に

 男性は今年に入って息切れが目立ち始め、「布団を動かすだけでも苦しかった」。心不全の典型的な症状で、検査で僧帽弁閉鎖不全症とわかった。

 僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間にある。血液はここを通って左心房から左心室に流れ、全身に送り出される。僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁が傷ついたり、心臓が拡大して閉じにくくなったりして血液が逆流し、心不全状態になる。

 この男性の場合、弁を治療すれば心不全症状の緩和が期待できたが、年齢や心機能の低下から外科手術はリスクが高いと考えられた。そこで、東京大特任講師の金子英弘さんは「経皮的僧帽弁接合不全修復システム」による治療を勧めた。マイトラクリップとも呼ばれるカテーテル治療だ。

 東大病院に入院し、7月中旬に治療を受けたところ、血液の逆流は減り、心不全の症状が治まった。男性は「以前は息苦しくて長く話せなかった。いまは10分でも20分でも話し続けられる」と改善を喜ぶ。

開胸より負担軽減

 この病気は、症状が軽いときは治療せず定期的な経過観察でよいが、重くなると息切れやめまい、不整脈が起きる。心不全悪化の原因にもなる。逆流を止める処置が必要で、胸を切り開いて弁を修復するか、人工弁に置き換える手術が行われてきた。

 患者の多くは高齢者で、心臓の働きが悪かったり、外科手術に耐えられないと判断されたりして、手術を断念する人も多かった。

 マイトラクリップは、僧帽弁の先端をクリップのような器具でつなぎ、血液の逆流を食い止める。脚の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、超音波画像を見ながら心臓まで移動させて処置をする。開胸手術に比べると体の負担は大幅に軽減される。

 金子さんは「手術が受けられなかった多くの患者が、この治療法で恩恵を受けるだろう」と話す。

 海外では実績のある器具だが、国内では使われ始めたばかり。日本循環器学会などが適正使用の指針を作り、患者の選択基準や実施施設を限定している。

 対象は、心不全症状のある僧帽弁閉鎖不全を患い、外科手術が困難な患者。この治療ができるのは、循環器内科や心臓血管外科の専門医らが複数在籍し、カテーテル治療や開胸手術の実績が豊富で、重症心不全治療を安全にできる病院に限られる。7月末時点で、全国十数病院で治療を受けられる。

 金子さんは「僧帽弁の修復だけが目的ではなく、心不全治療の一環と考えてほしい。この治療を受けた後も、継続的な診察や投薬などで心臓を守っていく必要がある」と話す。

 心臓の弁のカテーテル治療では、大動脈弁 狭窄きょうさく 症に対する「経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)」が2013年に承認され、広く行われている。

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