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「食べたこと忘れる」場合、「食器すぐに片づけない」有効率67%…認知症行動の対処法をDB化

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「食べたこと忘れる」場合、「食器すぐに片づけない」有効率67%…認知症行動の対処法をDB化

 妄想や不安を訴える、興奮し、怒りっぽくなるなど、認知症の行動・心理症状(BPSD=Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に家族らが悩み、疲弊する例は多い。全国の介護者から、こうした症状への対処体験をインターネットを通じて書き込んでもらいデータベース化、対処法ごとの有効率をウェブサイトで公開する「認知症ちえのわnet」事業を、大阪大や高知大などが進めている。研究班では「皆さんの体験を集め、認知症ケアに有用なビッグデータに育てたい」としている。

 このサイトは、集まったケア体験を分類し、どんな症状にどんな対応が有効かのデータを示している。体験の書き込みは16日正午までに1055件に上る。

 「食事したことを忘れ、食べてないと言う」場合、「食器をすぐに片づけないでおく」の有効率は7割弱。「同じことを何度も聞く」に対しては「あえて同じ説明を繰り返す」が6割弱と単純な割に悪くない。一方、「物をとられたと言う」に対し、「家族が管理していると伝える」は2割強にとどまるという具合だ。

 BPSDは、適切な声掛けや接し方で軽減させるべきだとされるが、現状では、どんな対応がどれだけ有効かは明確ではない。同サイトは、こうしたデータを収集する目的で国の助成を受けて作られ、2016年6月から一般公開された。

 ケア体験の書き込みは、まず認知症患者の生年、要介護度などを登録し、〈1〉どんなことが起きたか〈2〉どう対応したか〈3〉うまくいったか――などを入力してもらう。内容は事務局の医師らがチェックし、症状・対処法ごとに分類・集計する。

 サイトの閲覧数は20万件を超えており、認知症の夫と暮らす兵庫県内の女性(71)は「夫が電化製品の充電ランプを異様に怖がるようになった時、サイトの情報を参考に室内環境を変えた。失敗体験の情報も、『大変なのはうちだけじゃない』と気持ちを楽にしてくれるので貴重」と話す。

 研究代表者の数井裕光・高知大教授は「体験が集まるほどデータの信頼度が高まる。BPSDへの対処を考えるうえでの貴重な情報になるので、多くの人に協力してほしい」と話す。

          ◇

【認知症の行動・心理症状(BPSD)】  脳細胞が壊れることで起こる記憶力や判断力の低下などの中核症状に加え、生活環境や本人の性格などが絡み合って起こる症状。不安や徘徊(はいかい)、興奮、暴言・暴力、昼夜逆転など表れ方はさまざま。介護者の深刻な悩みになりやすいが、対応の仕方次第で改善することも多いとされる。

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