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がんと闘いながら…星の和名事典を出版

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がんと闘いながら…星の和名事典出版

撮影・里見研

  きたこういち さん64

 彦星(アルタイル)をインカイサン(犬飼いさん)。星三つが団子のように並んだミタラシボシ。いずれも星の和名だ。漁村や農村を歩いて約40年、文献や各地に伝わる約900種を証言とともに集めた「日本の星名事典」を出版した。

 コンパスがない時代、星は時刻や方角を知る手がかりとして漁や農作業を支えた。和名の元になった漁具などを手に「和名には、夢やロマンの香りではなく、生活苦の汗や涙が染み込んだ味わいがある」と語る。

 星を語る人々にひかれ、大学2年から趣味で始めた調査は、光学機器メーカー就職後も続けた。2006年にがんが見つかり、2度の手術で腎臓を摘出した。その後も5年近く母を介護しながら調査を続けた。肺などに転移したため、「いつ死ぬかも分からない」と事典編集に取りかかった。

 和名では野尻 抱影ほうえい 氏(1885~1977年)の「日本星名辞典」が有名だ。この本に登場する和名の証言者を訪ねて話を聞き、本とは違う事実も確認。自著は、これらの証言や新発見の和名も収録した。

 今も薬を週3回注射し、副作用と闘いながら調査に出かける。「本をきっかけに和名研究を志す人が出てくれれば」との願いも込めた。

 兵庫県出身。県内のプラネタリウムで解説を務めた。中之島科学研究所研究員。

(医療部 山田聡)

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