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真夏に深部体温を下げる「アイススラリー」って?…コンディショニング研究会報告

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 最高気温が30度を超える真夏日どころか、35度を超える猛暑日ですら珍しくなくなった日本の夏。だからといってアスリートは練習や試合を休むわけにはいきませんし、暑さに負けずにスポーツを楽しみたい人も多いはず。そこで、スポーツ医科学の専門家でつくる「コンディショニング研究会」(読売新聞社ほか協賛)では、特別な設備や装置がなくても実践できる暑熱対策アイテム「アイススラリー」を紹介します。

深部体温を抑えれば、運動の継続時間が長くなる

 国立スポーツ科学センターは6月29日、「東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた暑熱環境対策Ⅱ~身体冷却の実際~」と題するセミナーを開催しました=写真=。そこでアイススラリーが取り上げられました。

 暑さのせいで運動パフォーマンスを落としてしまう要因の一つは深部体温(体内の温度)の上昇です。国立スポーツ科学センタースポーツ研究部の中村大輔氏はまず、海外で行われた実験結果を紹介。運動開始前の深部体温を低くしておくと、運動の継続時間が長くなることを示しました(*1)。

 また、この実験では、運動開始時の深部体温にかかわらず、深部体温が40度程度にまで上がると、限界に達することもわかりました(グラフ1)。運動前の深部体温の差が運動継続時間の差となり、パフォーマンスに影響を及ぼしていると考えられます。

【グラフ1】運動前の深部体温を下げると、運動継続時間が長くなる

運動前のアイススラリー摂取は深部体温を上げにくくする 

 国内外のアスリートの世界では、深部体温を冷やすコンディショニング法が当たり前になりつつあります。近年、その一つとして注目を集めているのがアイススラリーです。まだ聞きなれない言葉かもしれませんが、「スラリーとは液状の氷のこと。微細な氷と液体が混合した流動性のある氷です」と中村氏。氷が解けるときに周りの熱を奪う融解熱の作用によって、高い冷却効果が得られるそうです。

セミナー時に試飲用として提供されたアイススラリー

 国立スポーツ科学センターでは、スポーツドリンクで作ったアイススラリーを競技現場の関係者に紹介しています。ランニング前にアイススラリーを飲んだ場合と4度の水を飲んだ場合の比較では、限界に達するまでの時間がアイススラリーを飲んだ方が長かったという試験結果も出ています(*2)。

 ただし、この試験では、ランニングの前に500グラム前後のアイススラリーを飲んでいるのですが、「実際、これだけの量を飲むことに抵抗を感じる選手がいることも事実」と中村氏は話します。胃腸への影響も懸念されるところです。

ブレイクタイムのアイススラリー摂取が現実的?!

 では、試合中にブレイクタイムがあるテニスやサッカー、アメリカンフットボールといった非持久系の運動の合間に、アイススラリーをこまめに飲んだらどうか?ということで、国立スポーツ科学センタースポーツ研究部の内藤貴司氏は、テニスの試合を模した運動中にアイススラリーを飲んだ場合の直腸温の変化について、最新の実験結果を発表しました。

 ブレイクタイムごとにアイススラリーをコップ半分程度(70~80グラム)飲むと、3セット目のゲーム以降の深部体温は、水を飲んだ場合に比べて上昇が抑えられ、有意な差がありました(グラフ2)。

【グラフ2】ブレイクタイム中のアイススラリーで、深部体温の上昇が抑えられる

 皮膚温の大幅な低下は筋肉温の低下に関連し、運動パフォーマンスに悪影響を及ぼすこともあると考えられますが、この研究では皮膚温には差はありませんでした。アイススラリーには「深部体温のみを効果的に冷やす効果が期待できる」(内藤氏)ようです。
 
 深部体温を下げてパフォーマンスを上げる方法として、コンディショニング研究会では以前、手のひらや足の裏、顔(頰)の冷却をすすめました。これも取り組みやすい方法ですが、特に暑熱環境での運動時には、アイススラリーも試してみてはいかがでしょうか。

 「スポーツドリンクを凍らせてミキサーで砕いたものを密閉性の高い魔法瓶に入れておき、運動前や運動の合間などに、こまめにとるといいのではないか」と内藤氏。なお、水で作ろうとすると、クラッシュアイスになってしまい、スラリーにはならないようです。

 アイススラリーはとても冷たくて、一度にたくさんは飲めません。必要な水分がアイススラリーだけで補えるとは考えず、脱水を防ぐための水分は別途とるように心掛ける必要があります。

 運動前、運動中、そして運動後に体を冷やすクーリング戦略には、手のひらなどを冷やす「外部冷却」と、アイススラリーの利用といった「内部冷却」があり、どのような競技種目で、いつ、何を、どのように組み合わせるかという検討も進んでいます。本研究会では今後も、暑熱環境におけるコンディショニング術について、最新情報を発信していきます。

*1 J Appl Physiol (1985). 1999 Mar;86(3):1032-9
*2 Med Sci Sports Exerc. 2010 Apr;42(4):717-25

 コンディショニング研究会のサイトは こちら

 

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