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[介護のいろは](8)帰省中 親の不調どう気づく?

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 お盆時期は、離れて暮らす親の元へ里帰りする人も多いでしょう。ともに年齢を重ねるにつれ、気になるのが親の健康状態です。日頃の電話のやりとりだけではわかりづらい認知症などの不調にどう気づき、対応すればいいのでしょうか。(辻阪光平)

行動、性格の変化見逃さず

 

[介護のいろは](8)帰省中 親の不調どう気づく?

■早期発見が大事

 「認知症の人と家族の会」(京都市)の理事で看護師の鎌田松代さん(61)が、佐賀県で暮らす父の変調を認識したのは2004年に帰省した時のことだった。

 食事中にしょうゆと天つゆの区別がつかず、当時騒がれた鳥インフルエンザのニュースも覚えていない。車を運転する動作も鈍くなっていた。すぐに受診を促し、アルツハイマー型認知症と診断された。それからは月1回実家に戻って、父を世話する母を、九州にいる弟とともに支えるようにした。

 08年には母も認知症と診断され、介護保険を活用して遠距離介護を続けた。両親はともに15年、80代で亡くなった。

 認知症というと物忘れのイメージが強いが、「長年続けてきた行動や性格の変化も、兆候の一つです」と鎌田さん。気がかりなことがあれば「年のせい」と決めつけず、改めて数日間滞在し、親の暮らしぶりを確認することを勧める。「発見や治療が早いほど、本人も家族も対応するための時間が持てます」

 親の不調や介護の準備に悩んだら同会や地域包括支援センターに相談しよう。同会は電話相談(0120・294・456)を受け付けるほか、都道府県の支部ごとに本人や家族が交流するつどいを開いており、連絡先は同会のホームページに掲載している。

■第三者の力借りる

 親の変調に気づき、受診や介護保険の利用に必要な「要介護認定」を受けることを促しても、拒否される場合は多い。「親は子に迷惑をかけまいと考え、頑張ろうとするものです」。岩手県で一人で暮らす認知症の母(75)を遠距離介護する東京都在住の工藤広伸さん(46)は言う。実体験や知識を「がんばりすぎずに しれっと認知症介護」(新日本出版社)にまとめた。

 工藤さん自身、6年前、母から同じ内容の電話が10回かかってきて異変に気づいたが、「体が心配だから健康診断に行こう」と促して病院に行くまでに5か月かかった。こうした経験から、「第三者に促してもらうと受診に応じてくれやすい」とする。「かかりつけ医や、地域包括支援センターの職員ら専門職が適任ですが、孫に忠告してもらうのもいいと思います」。かかりつけ医がいなければ、往診を行う「在宅療養支援診療所・病院」に相談する方法もある。

■親子で話す時間を

 実家で親の様子を確認して、不安に思う点がなくても、「今後の生活について、親子で話し合う時間を設けて」と工藤さん。親の介護が必要になれば、遠距離介護を始めるのか、自分の近くに呼び寄せるかなど、様々な判断を迫られる。「そうなった時にあわてずに済むよう、介護の希望や意見も伝え合い、ノートに書き残しておきましょう」と話している。

[専門家に聞く]仕事と両立 有休も活用

 離れて暮らす親の介護環境を働きながら整えるにはどうすればいいのだろう。仕事と介護の両立に向けた介護休業の活用法などを、一般社団法人・介護離職防止対策促進機構(東京)代表理事の和氣美枝さんに聞いた。

 

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 法律では原則、介護が必要な家族1人につき、通算93日の介護休業を、3回に分けて取得できます。これとは別に、年5日まで取れる介護休暇(半日取得可)もあります。

 このように日数や回数も限られる介護休業は、直接介護するための休みではなく、介護しながら働き続ける体制を築くためのものと理解しましょう。3回の分割取得は、〈1〉介護の初期の体制構築に伴うデイサービスなどの施設見学〈2〉心身状態の変化に伴う施設探しや入退院の対応〈3〉 看取みと りの対応――を目安に活用を考えてください。

 地域包括支援センターへの訪問や通院の付き添い、要介護認定の調査に立ち会うなど単発の用事は、介護休暇と有給休暇を組み合わせて対応することもできます。親子の印鑑や親の保険証、お薬手帳などを持参すれば病院や役場も効率良く回れます。土日での訪問・相談や、手続きの郵送対応が可能なところもあるので、確認しておけば、無理に休まずに済みます。

<疑問や思い 募集します>
 「介護のいろは」は毎月1回の掲載です。介護に関する疑問や今後読みたいテーマ、介護に抱く思いも募集しています。〒530・8551読売新聞大阪本社生活教育部「介護のいろは」係へ。ファクス(06・6365・7521)、メール(seikatsu@yomiuri.com)でも受け付けます。

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