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ダブルケア(上)育児と母の介護 1人奔走

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病院、児童館、リハビリ… 余裕なく「消えたい」

ダブルケア(上)育児と母の介護 1人奔走

母親を介護しながら2人の子どもを育てる杉山仁美さん(中央奥)=名古屋市で

 子育てと親の介護を同時期に行う「ダブルケア」で苦悩する人たちは少なくない。内閣府が2016年に発表した推計(12年時点)では、全国で約25万人に上る。2回にわたって、ダブルケアの現状と社会的な支援策を考える。

 名古屋市の杉山仁美さん(37)は、小学2年の長女(7)と、幼稚園に通う次女(5)を育てながら、要介護4の実母(66)を自宅で介護している。特に大変だったのは、母親が脳出血で倒れた2014年4月から、次女が幼稚園に入るまでの2年間だった。

 右半身にまひが残る母親は、自宅で暮らし続けたいと望んだ。夫(38)も含め家族4人で市内のマンションから、両親の自宅へ転居した。

 父親(69)は日中、仕事で不在だったが、母親の朝食や入浴の介助を担ってくれた。だが、夫は仕事で忙しく頼れない。「自分が母親を介護しなければ」と思った。住宅改修など母親の暮らしの準備に追われた。母親の担当ケアマネジャーに、育児も抱えた自身の負担を訴えることさえ考えつかず、訪問介護サービスの利用も思いもつかなかった。

 「子どもと母親、どっちを優先させるべきか」といつも選択を迫られた。通院時には次女を抱っこしながら、母親の車いすを押した。長女は母親のひざの上にのせた。肺炎の点滴治療で10日間通院した際は、院内を歩き回る娘たちから目が離せなかった。

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 38度を超える熱があっても、車を1時間運転し、母親を病院へ連れて行った。待ち時間が長く、長女の幼稚園の延長保育が終わる午後2時半までに迎えに行けそうになく、受診をキャンセルし、急いで幼稚園に向かった。

 リハビリ施設に通う日も大変だった。朝、長女の幼稚園の送迎バスが来るのを待っていると、リハビリに間に合わない。車でまず長女を幼稚園へ、その後、母親を施設へ送った。いったん帰宅して掃除や洗濯をこなした後、次女と児童館へ。親子で遊ぶ教室に参加したが、母親を迎えに行くため、昼前には抜け出さなければならなかった。

 長女の幼稚園参観とリハビリが重なった日は、仕方なくリハビリを休んでもらった。「介護を理由に子どもに我慢をさせたくなかった」と言う。

 ある朝の出来事が今でも忘れられない。トイレで母親のオムツ交換と、排せつ物で汚れた床や壁の掃除に追われていた。「失敗したら自分で何とかしようとしないで私に言って」とどなってしまい、母親が泣き出した。

 一方、長女は幼稚園に行く時間なのに身支度が終わらず、妹とけんかを始めた。「ママー」と泣きながらトイレに来た2人に、「泣きたいのはこっちだよ!」と叫んでいた。「全部投げ出して、消えてしまいたい」。涙があふれた。

 16年4月、次女が幼稚園に通い始めると、少し余裕が生まれた。「私自身の居場所がほしい」と思い、今年2月から不動産会社で週3日、朝から昼過ぎまで働く。昼食の介助を、訪問ヘルパーに任せている。

 杉山さんは「介護の経験がない『ママ友』に、苦労を思い切ってはき出すこともできなかった。介護保険をもっと活用し、同じ境遇の人たちと情報や思いを共有できれば、一人で抱え込まずにすんだかもしれない」と思っている。

  <ダブルケア>  内閣府は「小学校入学前の子どもの育児と、家族の介護を両方担っている人」として、全国に計25万3000人と推計している。3人に2人が女性だった。平均年齢は男女とも40歳前後。育児だけの人より4~5歳程度高く、介護だけの人より20歳程度若かった。

「しんどい」言えず 孤立しがち

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 晩婚・晩産化を背景に、子育ての時期に親の介護が重なりやすくなっている。2016年の女性の平均初婚年齢は29.4歳、第1子出産の平均年齢は30.7歳と、約30年間でいずれも約4歳上昇した。

 ソニー生命保険が今年2~3月、ダブルケア経験者1000人にインターネットで調査した結果、負担に感じること(複数回答)は、「精神的にしんどい」(47%)が最多で、「体力的にしんどい」(43%)が続いた。男女別では、どちらも女性の方が高かった。

 支援に取り組む横浜市の一般社団法人「ダブルケアサポート」の あずま 恵子代表理事(44)は、「両方の負担を女性が一人で背負い、孤立しがちだ。遠慮せずに、ケアマネジャーなどに大変さを訴え、助けを求めてほしい」と話す。

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