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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

コラム

夏だ! ご飯だ! 食中毒だ?!

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潜伏期は短く、症状も長くは続かない

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 どんな感染症にも、潜伏期というものがあります。病気は、体内に入った微生物が増殖して起こる(しかも、その増殖に時間がかかる)からです。しかし、この食中毒は、潜伏期が1~6時間と、とても短い。黄色ブドウ球菌による食中毒は、微生物ではなくトキシンが原因だからです。

 さっき楽しくお昼を食べたばっかりだったのに、吐いたり下したり、おなかが痛くなって七転八倒したりと、せっかくのピクニックが台なしになってしまうのはこのためです。

 同じものを、多くの人たちが一緒に食べれば、食中毒の集団発生です。たった1人の手からでも、大勢の人向けの食べ物にトキシンがうつっていくため、サンドイッチやおにぎりなど、「手で作る料理」で被害が大きくなりがちです。特に夏に起きやすいのが特徴です。

 幸い、黄色ブドウ球菌による食中毒は、トキシンが腸にくっついている間だけ続く病気で、その後はすぐに治ります。症状は、12時間も続かないのがほとんどです。

 ただし、脱水は怖いので、水分はこまめに取りましょう。「吐いたり、下痢したりしているので水分を取れない」と言う人がいますが、吐いたり、下痢をしているときこそ、しっかりした水分補給が必要です。吐いた後にこまめに水分を取っていれば、たいてい自然に治ります。が、万が一、「口からは無理ー」というのなら、そのまま我慢したりせずに病院に行きましょう。

「定着」なければ、発病なし

 忘れてはならない大切な点が、「予防」です。

 大原則は、「微生物がなければ感染症は起きない」。食べ物に菌やトキシンが付かない限り、食中毒は絶対に起きません。

 一番効果的なのは、せっけんを使って手を洗うことです。調理中に鼻など、自分の体にさわるのはもってのほか。せっかくビニール手袋をはめて調理しているのに、そのままそれで鼻とかをさわったら、意味ないですよー。

 この夏は、災害のために避難所での生活を強いられている人も多いでしょう。避難所も食中毒の起きやすい場所ですので、食品衛生には十分注意してください。

 ただ、あまり神経質になりすぎると、「衛生管理疲れ」になってしまうこともあります。これはこれで、健康によくありません。予防の原則をしっかり守り、おいしいごはんを食べて、楽しく元気に過ごすことも、とても大事です。(岩田健太郎 感染症内科医)

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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