Dr.イワケンの「感染症のリアル」
医療・健康・介護のコラム
夏だ! ご飯だ! 食中毒だ?!
いや、暑いですねえ。子供たちは夏休みで、海へ、山へお出かけだ!
ぼくも、休みの日に外に出るのは大好き。早起きしてお弁当を作って、家族みんなで出発します。
さて、猛暑で問題になるのが、食中毒です。せっかくのお出かけだから、これだけは避けたい! 食中毒の定義はいろいろあり、一律の決まりはありません。多くの場合、食べ物や飲み物が何らかのモノに汚染された結果、「おなかをこわす」ことを指します。そのほとんどは、微生物が原因です。
夏に多い、黄色ブドウ球菌による食中毒
今回取り上げるのは、そうした原因として特に多く、さらに夏に問題になりやすい「黄色ブドウ球菌=おうしょくぶどうきゅうきん=」です。
黄色ブドウ球菌は、珍しい微生物ではありません。それどころか、健康な人の3割程度は、常時この菌を体にくっつけていると言われています。この「くっついている」状態を、専門用語では「定着」と呼びますが、一般には必ずしも定着していませんね(ここ、笑うところです)。
大事なのは、「微生物が体に定着している=(イコール)病気」――ではないことです。
我々の体には、常にたくさんの微生物が住んでいて、そのおかげで健康を維持できています。黄色ブドウ球菌も、たいていは皮膚や鼻の穴、わきの下や股間に定着しています。それ自体は病気でも何でもありません。黄色ブドウ球菌は空を飛べないので、空中を伝って人から人にうつることもありません。
ただ、黄色ブドウ球菌の中に、毒を作るタイプの菌がいるのです。黄色ブドウ球菌が作る毒にはいろいろありますが、食中毒の原因になるのは「エンテロトキシン」という毒です。「エンテロ(腸)」と「トキシン(毒)」で、「おなかの毒」という意味です。
例えば、ある人が、朝、お弁当のおにぎりを握っているとしましょう。急に鼻がかゆくなって、ついつい鼻をホジホジしてしまいました。この人の鼻には、黄色ブドウ球菌が定着していました。しかも、たまたまエンテロトキシンを作るタイプだったのです。で、そのままおにぎりを握る。ご飯にエンテロトキシンがくっつく。これを食べると、食中毒が起きるのです。
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