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高齢者の頭部外傷と出血…抗血栓薬服用 転倒に注意

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高齢者の頭部外傷と出血…抗血栓薬服用 転倒に注意
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 東京都の有田 笑子えみこ さん(69)は5年前、路上で自転車にぶつかって倒れた。打撲の治療を受けて帰宅した翌日、吐き気がして病院で検査すると、頭の中に出血が見つかり緊急手術となった。患っている心臓病の影響で血の塊(血栓)ができるのを防ぐため、血液をさらさらにする抗血栓薬を服用しており、倒れた時の衝撃で出血したとみられる。(赤津良太)

 高齢者は病気や薬の副作用、老化などが原因で転倒しやすい。例えば、不整脈による失神で倒れたり、関節の痛みで歩行バランスが崩れ、つまずいたりする。睡眠導入剤で日中に眠気が残るとリスクになる。体を支える筋力も弱くなる。

 日本脳神経外傷学会が全国32施設の頭部外傷患者について、2015~17年度の1345症例のデータを分析した結果、重症患者の52%が65歳以上の高齢者だった。原因は、転倒・転落が65歳以上で55%と最も多く、65歳未満の25%を2倍以上も上回った。

副作用で命取り

 転倒して頭を打ち、頭の中で出血すると命取りになりかねない。同学会によると、頭部外傷を負った65歳以上の死亡率は44%で、65歳未満の27%を上回る。病状が良くなった割合は、それぞれ15%と49%で、65歳以上が低かった。

 高齢者は加齢や動脈硬化などで血管がもろくなり、抗血栓薬の服用で大出血を起こすリスクが高まる。

 抗血栓薬は、抗血小板薬と抗凝固薬の大きく二つに分かれる。血液の流れを良くする効果があり、心臓病の治療、不整脈の一つの心房細動が引き起こす脳 梗塞こうそく の予防などに使われるが、いったん出血すると止まりにくくなる。

 特に心房細動は高齢者に多く、患者は100万人を超えるとされる。頭部外傷患者のデータでみても、65歳以上の抗血栓薬の服用率は3割を超える。

 データを分析した山口大病院先進救急医療センター診療准教授の末広栄一さんは「頭部外傷に抗血栓薬の服用が加わると、高齢者は頭の中で出血を起こしやすく、その後の経過もかなり悪い。薬に効果と副作用の両面があることを知ってほしい」と訴える。

自覚がなくても…

 有田さんは転倒時に頭を打っていないと思っていたが、CT(コンピューター断層撮影)検査で、頭の骨の内側に血がたまる硬膜下血腫と分かった。そのままにしておくと命にかかわるため、頭の骨の一部を切り開いて血を取り除いた。

 日本医科大病院高度救命救急センターで手術を担当した恩田 秀賢ひでたか さんは、「抗血栓薬を飲むと、本人が気付かないほど軽い頭部打撲で出血することもある」と指摘。「救急搬送時に抗血栓薬の種類を書いたカードを身につけていれば、より安全で適切な治療が受けられる」と話す。

 転倒後もしばらくは会話ができ、問題があるように見えなくても、頭の中で出血がじわじわと進み、急に意識を失うこともある。

 同学会理事長で山口大脳神経外科教授の鈴木 倫保みちやす さんは、「抗血栓薬を服用する高齢者は、頭をぶつけたら専門医を受診し、薬の種類を伝えてほしい。医師はCT検査を行い、出血があれば速やかに止血してほしい」と呼びかけている。

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