科学
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高齢者の頭部外傷と出血…抗血栓薬服用 転倒に注意
東京都の有田
高齢者は病気や薬の副作用、老化などが原因で転倒しやすい。例えば、不整脈による失神で倒れたり、関節の痛みで歩行バランスが崩れ、つまずいたりする。睡眠導入剤で日中に眠気が残るとリスクになる。体を支える筋力も弱くなる。
日本脳神経外傷学会が全国32施設の頭部外傷患者について、2015~17年度の1345症例のデータを分析した結果、重症患者の52%が65歳以上の高齢者だった。原因は、転倒・転落が65歳以上で55%と最も多く、65歳未満の25%を2倍以上も上回った。
副作用で命取り
転倒して頭を打ち、頭の中で出血すると命取りになりかねない。同学会によると、頭部外傷を負った65歳以上の死亡率は44%で、65歳未満の27%を上回る。病状が良くなった割合は、それぞれ15%と49%で、65歳以上が低かった。
高齢者は加齢や動脈硬化などで血管がもろくなり、抗血栓薬の服用で大出血を起こすリスクが高まる。
抗血栓薬は、抗血小板薬と抗凝固薬の大きく二つに分かれる。血液の流れを良くする効果があり、心臓病の治療、不整脈の一つの心房細動が引き起こす脳
特に心房細動は高齢者に多く、患者は100万人を超えるとされる。頭部外傷患者のデータでみても、65歳以上の抗血栓薬の服用率は3割を超える。
データを分析した山口大病院先進救急医療センター診療准教授の末広栄一さんは「頭部外傷に抗血栓薬の服用が加わると、高齢者は頭の中で出血を起こしやすく、その後の経過もかなり悪い。薬に効果と副作用の両面があることを知ってほしい」と訴える。
自覚がなくても…
有田さんは転倒時に頭を打っていないと思っていたが、CT(コンピューター断層撮影)検査で、頭の骨の内側に血がたまる硬膜下血腫と分かった。そのままにしておくと命にかかわるため、頭の骨の一部を切り開いて血を取り除いた。
日本医科大病院高度救命救急センターで手術を担当した恩田
転倒後もしばらくは会話ができ、問題があるように見えなくても、頭の中で出血がじわじわと進み、急に意識を失うこともある。
同学会理事長で山口大脳神経外科教授の鈴木
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