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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

コラム

「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と栄養療法

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 小学生の頃、兄や弟と一緒に () ていたバラエティー番組は、お笑い芸人さんたちが体を張って笑いを取る、今ではありえないような企画が流行っていました。そんな中、「笑点」は「着物姿のおじさんたち」が座布団の上でしゃべる古典的なスタイルで、落語をよく知らなかった私には、大喜利がむしろ新鮮で面白かったのを覚えています。

 この番組でも独特な話し方で大好きだった桂歌丸さんが、7月に「慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)」が原因で亡くなられたことはとてもショックでした。お茶の間にたくさんの笑いを届けてくれた歌丸さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。

体重が減少しやすいCOPD

「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と栄養療法

夏休みに入った子どもたちのために、地元小学校の「おやじの会」では校庭で五右衛門風呂を炊きました

 「COPD診断と治療のためのガイドライン2018(第5版)」(日本呼吸器学会COPDガイドライン第5版作成委員会編)によると、COPDの定義は「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す」とあります。

 「気流閉塞」の原因は大きく2種類に分けられています。一つは「肺胞」という、酸素と二酸化炭素を交換するための器官が壊れてしまう肺気腫と、もう一つは「気道」が炎症によって狭くなり、空気が通りにくくなる慢性気管支炎です。この二つは複合的に発症することが多く、歩いたり、階段を上ったりした時に息切れがしたり、日常生活でも (せき)(たん) が止まらないといった症状が表れます。しかし、あまり目立った症状が出ないまま悪化していく方もいます。

 【COPDを疑う特徴】

 1)喫煙歴あり(特に40歳以上)

 2)咳、痰、 喘鳴(ぜんめい) (ゼイゼイすること)

 3)労作時(階段や坂道の上りなど)の息切れ

 4)風邪をひいたときに2)や3)が出る

 5)風邪症状を繰り返したり、回復に時間がかかる

 6)心血管系疾患、高血圧、糖尿病、脂質異常症、 骨粗鬆(こつそしょう) 症などがある

 (同ガイドラインより一部変更) 

 桂歌丸さんは、かなりのヘビースモーカーだったそうです。COPDはかつて「たばこ病」と呼ばれたこともあるそうですが、最近の研究では、幼少期の長い間に気道などに炎症があり、肺が発育不全になると、将来のCOPDの発症のリスクが高まることが明らかになっています。子どもの頃にぜんそくなどの肺の病気で苦しんだ経験のある方は、生活習慣に特に気を付ける必要がありそうです。

 そして、重度のCOPDの患者さんの約40%に体重減少があります。初期には、体脂肪が減少し、重度になると筋肉が減少してしまうため、徐々に歩けなくなり寝たきりになってしまうことも少なくありません。確かに桂歌丸さんも痩せていました。

 米国の研究によると、標準に比べて9割未満の体重しかないCOPD患者は、そうでない患者よりも生存率が低下することが分かっています。ガリガリに痩せてしまう前に、適切な治療と栄養療法を行う必要があると言えます。

呼吸器疾患にも、食事の改善でできることがある

 私が訪問していた患者さんの中にも、COPDの方が数名いらっしゃいました。3度の食事をしっかり食べているのに体重が低下してしまうのです。数メートル先のトイレへ行くにもゼイゼイと息切れし、本当に苦しそうでした。食欲もあまりなく、食べる量も少ないため、さらに痩せてしまいます。

 また、COPDの方は健常な人よりも「呼吸」にエネルギーが必要となり、中には約10倍ものエネルギーを要する人もいると言われています。これも患者さんが痩せてしまう原因の一つです。

 したがって、十分なエネルギー量の食事が必要になります。ガイドラインによると、1日に必要なエネルギー量は、安静時に消費するエネルギー量の1.5倍以上とされています。安静時の消費エネルギーが1日1500キロカロリーの人の場合、必要量は2250キロカロリー。毎食のごはんは少なくとも200グラム強、さらにおかずや間食もしっかり食べないと必要栄養量に達しません。若い人ならともかく、ほとんど動かずに家で過ごしている高齢の方には大変な量です。

 そこで、エネルギーをアップする栄養補助食品を料理に加えたり、食事の回数を増やしたり、メニューに揚げ物や炒め物を多く使うなど、さまざまな方法で食べていただくように工夫します。

 「食欲はないけど、ごはんとみそ汁ならなんとか……」という患者さんも少なくないのですが、それではエネルギー中の糖質の割合が高くなってしまいます。糖質は、体内で分解されるときに、脂質やたんぱく質に比べて二酸化炭素を多く発生させます。あまりに偏ってしまうと、呼吸器に良くない影響を与えることになります。やはり毎日の食事には「糖質、脂質、たんぱく質のバランス」が重要です。

 また、運動療法を取り入れずに栄養だけを摂取してもあまり効果がないことがわかっています。体重の変動や栄養状態を確認しながら、運動(リハビリテーション)と栄養強化をセットで行い、呼吸機能が維持できるようにします。運動療法と併用すると効果的な「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」を多く含む食品を選択し、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル類も必要量が満たせるようにアドバイスもします。

 <BCAAが多く含まれる食品>
 小麦粉製品(パン・うどん・そうめんなど)、ジャガイモ、大豆製品、青魚、アサリ、イカ、タコ、エビ、牛肉、鶏肉、卵、牛乳など 

 COPDは、「肺の病気」というよりも全身性の疾患であり、他の生活習慣病が併発しているケースもよく見られます。エネルギー量が足りないと、体は筋肉を分解して不足分を補充しようとしますので、ますます体力が低下してしまいます。体重が減少し始めているけれど、どうしたらいいのかわからない……、そんな時には、ぜひ早めに病院の管理栄養士に相談していただきたいと思います。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子)

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塩野崎顔2_100

塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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