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精神科医・内田直樹の往診カルテ

コラム

在宅医療の味方 オンライン診療

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在宅医療の味方 オンライン診療

ただいまオンライン診療中。パソコンの画面に映っている患者さんに挨拶をします(内田医師提供)

 在宅医療はよさそうだけれど、十分な診療は受けられるのだろうか――。そんな不安を解消していく選択肢の一つが、オンライン診療だと私は思います。

認知症に好転の兆し、そこに悪性リンパ腫の再発が

 長崎県で長距離トラックの運転手だったAさん(86)は、長年妻との2人暮らしでしたが、2017年3月、福岡市内に住む娘の自宅で同居を始めました。5年ほど前からもの忘れが始まり、まもなく妻にももの忘れがみられるようになったためです。

 Aさん夫妻が当院を受診したのは、福岡に移って半年後でした。看護師をしていた娘の発案で、Aさんは認知症治療薬を使うことになりました。すると、それまでは嫌がっていたデイサービスを受け入れるようになり、昨年2月にはショートステイにも行けるようになりました。

 ところが、6月に入り、3年前に一度治療した悪性リンパ腫が再発。7月初めには、担当医に『余命2か月』と宣告され、在宅医療を始めることになりました。

オンライン診療も加えて在宅医療を開始

 2017年7月20日に、最初の訪問診療に行きました。わきの下から胸にかけて腫れが出ていて、食事量もそれまでの8割ほどに減っていました。さっそくAさんのための「オンライン診療計画書」を作りました。実は、もの忘れ外来に来ていた段階で、Aさんの娘に私からオンライン診療を提案していたのです。 

 オンライン診療とは、パソコンやスマートフォンを使って本人や家族と会話したり画像を通して症状を診たりする、ICT時代ならではの診療方法です。表情は見えるし息づかいも聞こえるので、直接触れ合えなくてもかなり様子はわかります。

【8月3日】(定期訪問) 本人に体調を尋ねると「何ともない」、痛みについても「ないです」。が、食事量は半分に減っており、鎮痛薬も1日1回は内服していた。

【同8日】(初回のオンライン診療) 本人が「夏バテ気味です」と元気なく語る。Aさんの娘がかざすスマートフォンの画像でみると、左わきのリンパ腫の赤みが広がっていた。10日後だった訪問診療を早めることにした。

【同10日】(定期訪問) 吐き気がひどく、「横になる時間が増えた」と娘が報告。体重が1週間で2キロ減少。制吐剤を処方。

【同17日】(定期訪問) 吐き気はおさまったが、食事量は2か月前の2割に。「ほとんど横になっている」と娘から聞き、元気が出るようにと、ステロイドの座薬を処方。

【同21日】(電話相談) 娘から「食事や水分をほとんど取れなくなった」。水分補給の点滴を開始。

【同22日】(オンライン診療) 私の声に反応したAさんが目を開け、会話。左わきからの滲出(しんしゅつ)液を画像で視認し、「臭いがきつい」との娘の報告に、軟膏を変更。鎮痛剤を増やした。

【同25日】(定期訪問) 痛みは治まった様子。声をかけるとAさんも声を出すが、会話にはならない。

【同28日】(電話相談) 娘から「39度近い熱があり、10秒おきにけいれんする」。待機医が熱冷ましとけいれんを止める座薬2種を処方。

【同29日】(オンライン診療) Aさんが食事や水分を取れなくなって1週間。けいれんは上半身にのみ起こっているのを視認。娘が体をゆすっても起きないほど意識レベルは下がっており、「前夜から排尿がない」との報告を聞き、家族を呼ぶように勧めた。

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内田直樹(うちだ・なおき)

医療法人すずらん会たろうクリニック(福岡県福岡市東区)院長、精神科医、医学博士。1978年長崎県南島原市生まれ。2003年琉球大学医学部医学科卒業。福岡大学病院、福岡県立太宰府病院を経て、10年より福岡大医学部精神医学教室講師。福岡大病院で医局長、外来医長を務めた後、15年より現職。日本精神神経学会専門医・指導医、日本老年精神医学会専門医、NPO法人日本若手精神科医の会元理事長。在宅医療の普及を目指して「在宅医療ナビ」のサイト運営も行っている。編著に「認知症の人に寄り添う在宅医療」(クリエイツかもがわ)。

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