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おなかの中で亡くなった三男、悲しみのどん底に突き落とされたが…

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 母親にとっては、どんなに言葉を重ねても、言い表せない悲しみだと思います。

 〈今年3月22日、人生で一番の悲しみを味わいました。三男を死産しました〉

 関西地方にお住まいの山根美波さん(37)(仮名)から届いた手紙を紹介します。

分娩室に産声なく…ただ眠っている赤ちゃん

おなかの中で亡くなった三男、悲しみのどん底に突き落とされたが…

 美波さんは長男(3)、次男(1)のお母さんで、小学校の教師をされています。今春、3人目となる男の子の誕生を心待ちにしていました。名前も妊娠6か月の頃には決めていたのですが……。

 〈三男は、あと2週間で出産というとき、私のおなかの中で静かに天国に旅立ちました。原因不明で、主治医からは『100人に1人の割合で起きてしまうこと』と言われました。 分娩ぶんべん 室に産声はなく、静かな出産でした。ただ眠っている、とてもかわいい赤ちゃんでした〉

 母親として大きな喜びを迎えるはずの場所で、悲しみのどん底に突き落とされた美波さん。支えになったのは、助産師さんたちの存在でした。

 〈ずっと寄り添ってもらい、みんなが三男のために涙を流してくれました。ある助産師さんから『人間は2回死ぬ。1回目は肉体が死ぬとき、2回目はみんなの記憶から消えるとき』と言われました。肉体は死んでしまい、戸籍にすら残らないけれど、記憶から消えて、2回死なせちゃいけないと強く思いました〉

 手紙は、同じ経験をされた人の力に少しでもなりたい、との思いとともに、こんな決意で締めくくられています。

 〈三男は失ったけれど、いろんなことを教えに来てくれたことに感謝しています。この経験を仕事に生かし、命の大切さを児童たちに伝えていけたらと思います。三男の名前に決めていたのは『陽平』です。陽気で平和な人生を歩んでほしいとの願いを込めていました。陽平のお葬式の日、私は長男、次男に『陽気で平和な家族! これが今日から、わが家の家訓だ!』と宣言しました。そのことでいつまでも陽平のことを思い出したいと思います。長男、次男は『陽ちゃん』に毎日手を合わせ、明るく、仲良く育っています。ずっと仲良し三兄弟でいることを願っています〉

傷つき、それでも前を向いて生きる

 詩人の谷川俊太郎さんの「あなたはそこに」という詩に、こんな一節があります。

 〈ほんとうに出会った者に別れはこない/あなたはまだそこにいる/目をみはり私をみつめ くり返し私に語りかける/あなたとの思い出が私を生かす/早すぎたあなたの死すら私を生かす/初めてあなたを見た日からこんなに時が過ぎた今も〉

 かけがえのない、あまりにも多くの命が失われた夏です。深い喪失に傷つき、それでも前を向いて生きる美波さんの思いが、届いてほしい夏です。(祝迫博)

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