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新時代の「セルフメディケーション」

健康・ダイエット・エクササイズ

自分の健康は自分で守る…「セルフメディケーションの日」シンポジウム

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健康づくりを「自分ごと」として意識していくことの大切さなどについて議論が行われた「セルフメディケーション」のシンポジウム

 「セルフメディケーションの日」(7月24日)の設定に合わせ、シンポジウム「セルフメディケーションは今、そして未来は。」(日本OTC医薬品協会主催)が23日、東京・元赤坂の明治記念館で開かれた。

 「セルフメディケーションの日」は、同協会が、病気の予防や健康づくりの重要さを改めて意識するきっかけにしてほしいと、「健康管理には休みがない」という意味を込めて、1日「24」時間、週に「7」日間という数字にちなんで定めた。シンポジウムでは、健康づくりを「自分ごと」として意識していくことの大切さや、危機的な状態にある日本の社会保障財政について様々な角度から議論が行われた。

「病気になったら病院へ」からの転換…未来志向の発想を

 初めに、佐藤誠一同協会会長が「セルフメディケーションには健康リテラシーが重要。協会としても向上に取り組んでいきたい」とあいさつ。東京大学センター・オブ・イノベーション(COI)副機構長で同大学大学院工学系・医学系研究科の鄭雄一ていゆういち教授が「自分で守る健康社会の実現に向けて―健康年齢100歳への挑戦―」と題して基調講演を行った。

基調講演で「自分の健康は自分で守る」ことを訴えた鄭教授

 鄭教授は、「病気になったら病院へ」「若者が高齢者を支える」「高齢者の医療費を削減」という現在の意識や課題を、「自分の健康は自分で守る」「高齢者も社会を支える」「新しい医療産業を育てる」という未来志向の発想に切り替えていく必要があると問題提起した。

 その上で、国民の行動を変えていくために、COIではビッグデータで将来の健康リスクを予測し、個人に合わせた対処と動機付けの手法を開発、さらに効果を可視化するための研究を進めていると報告。「健康を“自分ごと”化する」ことの大切さを訴えた。

受動喫煙対策の義務化などについて紹介した正林・厚労省課長

 続いて、厚生労働省健康局健康課の正林しょうばやし督章とくあき課長が「国民健康づくりの最近の動向」をテーマに、健康増進法を今年一部改正し受動喫煙対策を努力義務から義務へと強化したことを紹介。元の法律は2002(平成14)年に成立したが、「国民は健康の増進に努めなければならない」という条文の重みを語った。

医療崩壊の夕張市…変わった意識、地域で緩やかに見守る医療が実現

 南日本ヘルスリサーチラボ代表で鹿児島医療介護塾まちづくり部長の森田洋之医師は、2007年に財政破綻した北海道の夕張市での経験に触れた。財政破綻後、病院の病床数は171床から19床に激減し、救急車の出動回数は半減、医療費も減った。ところが高齢化率48%の地域で死亡率は増えなかった。予防に力を入れたこともあり、がん、心疾患、肺炎の3大死因で亡くなる人は減り、老衰が増えたという。

北海道夕張市での「医療の再構築」の経験を語る森田医師

 森田医師は「夕張では、息子の顔もわからない重度の認知症高齢者が1人暮らしをして、病が進めば入院するのではなく、在宅で看取みとりをしている。地域の人たちが緩やかに見守っているからそれができる。一方、医療が整った鹿児島の都市では高齢者は施設に入所し、悪化すれば病院で寝たきりになっている。夕張では医療が崩壊したが、そこで起こったのは医療の再構築だった」と述べた。

増加する社会保障費…子や孫の世代に付け回す国は日本だけ

 日本総合研究所調査部の河村小百合上席主任研究員は、専門である財政政策の視点から、「巨額な政府債務残高がありながら、財政はなんとかなっていると思う人が少なくありませんが、子や孫の世代に付けを回しているだけ」と危機感を訴えた。

赤字国債、社会保障費の改革などについて語る河村・上席主任研究員

 河村氏は「国債の60年償還ルール」という国際的に特異な日本の仕組みを解説。日本の国債は10年債であっても10年で返さず、60年で償還するルールで運営されている。このルールは、公共の設備は後の世代も使うことから建設国債で適用されていたが、赤字国債にも当てはめられ、次世代への付回しが常態化したという。

 これを受けて、河村氏は「日銀が5割近くの国債を買う事実上の財政ファイナンスを早期に収束させ、財政再建に取り組み、社会保障費の改革に本腰を入れる必要がある」と強調した。

 一方、読売新聞医療部の館林牧子部長は、生活習慣病の治療や生活習慣の見直し効果もあって高齢者の心身の状態が若返っていることに触れ、「健康や予防、生き方への関心は高まっていて、軽症なら自分で手当てすることも今後の流れになる可能性がある」と指摘した。

セルフメディケーションの浸透を

 パネルディスカッションでは、財政問題やセルフメディケーションの普及が話題になった。森田医師は「夕張では病院がなくなるという危機感から、健康維持の大切さを自分ごととして感じるようになった。その意識を日本中に広めていきたい」と経験を基に発言。河村・上席主任研究員は「借金を収束させないと、夕張で起こったことが日本の国レベルで起こることになる。のちの世代をここまで犠牲にする国がありますか」と厳しく指摘した。正林・厚労省課長も「行政官であれば、財政の厳しさは意識しています。社会保障費の抑制が必要なことは理解していただかないといけません」と話した。

 セルフメディケーションについては、正林課長が「厚労省としては前向きで、セルフメディケーション税制を導入しました。浸透してほしいと思います」と語った。一方、館林・読売新聞医療部長は「一般薬にも副反応はあるので、安全性には注意が必要です」と指摘。これについて日本OTC医薬品協会の西井良樹副会長は「リスクを管理するためには、健康ステーションとしてのドラッグストアの役割が重要です。また、24時間対応の店が増えると利用しやすいメリットがあります」と話していた。

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