心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
医療・健康・介護のコラム
診断の「決定打」がない…科学的実証主義だけでは対応できない「化学物質過敏症」
医学は万能ではない…状況証拠や医師の推察からの診断を軽視しないこと
全身に及ぶ不調は、化学物質過敏症のほかにも、慢性疲労症候群、線維筋痛症など種々の病名があります。いずれも、状況証拠や医師の推察から診断がつくものですが、共通の検査所見や症状といった、診断への「決定打」はありません。
このため医師の中には、こうした病気の存在そのものに懐疑的な見解もあります。とはいえ、つらく厳しい症状に日々苦しむ患者を前に、「決定打」がないからといって、医師が無視をしたり、診察を拒絶したりすると、行き場を失った患者が、
臨床医は科学者の端くれを自認しているので、一流の学術誌に掲載された実証的な事項は重視しても、そこでは認められていない、目の前の患者から把握できた状況証拠を軽視する傾向があります。
でも、診断にいつも確度の高い科学的根拠を求めようとしても、現代医学の浅い歴史の中では、まだまだ研究が不足しているのです。そのことを、専門家も一般の皆さんも知らなければなりません。医学が万能ではない現在、推定診断を軽視してはならないのだと思います。
(若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)
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