新時代の「セルフメディケーション」
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市販用への切り替え医薬品「スイッチOTC」を活用しよう…SIC取締役・堀美智子さんに聞く~
昨年度分の確定申告から市販の薬代を控除できる「セルフメディケーション税制」が始まった。市販の薬と言っても対象は限定されていて、もともと医療機関で処方されていた成分を市販用に切り替えた「スイッチOTC(Over The Counter=市販の薬の意味)」と言われる薬が対象だ。薬剤師で民間の医薬情報研究所㈱SIC(エス・アイ・シー)取締役の、堀美智子さんに、セルフメディケーションの課題について聞いた。
スイッチOTC薬の利用は増えている

「薬剤師は薬や健康情報の専門家。気軽に活用して」と語る堀美智子さん(東京都八王子市の公園前薬局暁店で)
――スイッチOTCにはどのような薬がありますか。
花粉症シーズンのアレルギーの薬や、解熱鎮痛消炎剤のイブプロフェンやロキソプロフェンを含む薬、胃酸分泌を抑えるH2ブロッカー、水虫や湿疹、虫刺され用の塗り薬などいろいろあります。
薬局で聞いていただければわかりますが、パッケージに「セルフメディケーション 税控除対象」の標識マークが付いています。テレビコマーシャルを放送している薬がよく使われている印象があります。
――スイッチOTC医薬品の売り上げは5年で20%以上伸びているという調査がありますが、税制は市販薬の利用を後押しするでしょうか。

スイッチOTC 薬のパッケージに付いている標識マーク
この税制は、効果が高い医療用の薬を市販薬に切り替えることで、医療機関の受診を減らし、自己負担で薬を買うようにして公的な医療費を抑制しようという国の政策です。一方、患者にとっては、医療機関にかからなくても手軽に薬局で必要な薬が手に入るメリットがあります。
しかし、健康保険の自己負担はご存じのように1~3割ですから、自己負担だけを考えると、医療機関にかかるよりも市販薬を買う方が高くなることがあります。セルフメディケーション税制は始まりましたが、対象が市販薬全般というわけではないので、現在の健康保険制度の下で、利用がどこまで定着していくのかは難しい問題です。
「お任せ医療」になっていませんか
――セルフメディケーションという考え方は広がりにくいということでしょうか。
不調があれば、休養が必要なのか、市販薬を使うか、医療機関に行くのかと考えて決めるのが自然な流れですが、まずは受診して検査して薬をもらうという習慣になっていませんか。
健康保険制度のおかげで、比較的安価に医療機関を受診できるのは素晴らしいことですが、その結果、自分の体の声を聞いて考えるのではなく、まず医師にかかり処方された薬を飲むという専門家に依存したお任せ医療になってきたのではないでしょうか。そのため、健康や医療について正しい理解を持つ「ヘルスリテラシー」が育ちにくかったと思います。
ヘルスリテラシーが向上すれば、「コンビニ受診」と言われるような安易な受診や夜間の受診は減り、医師を疲弊させてしまうことがなくなると思います。医療が必要な人をどんな時でも受け入れる体制は必要ですが、乱用は避けるべきです。その意味でもセルフメディケーションという考え方は大切だと思います。
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