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新時代の「セルフメディケーション」

健康・ダイエット・エクササイズ

市販用への切り替え医薬品「スイッチOTC」を活用しよう…SIC取締役・堀美智子さんに聞く~

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緊急避妊薬を薬局で買えるようにしてほしい

――使い慣れた医療用の薬が、休日とか夜間でも薬局で買えると助かるので、スイッチOTCが広がっていくのは利用者としてはありがたいですね。薬剤師の立場から見て、現在は医療用でも、スイッチOTC化されると利用者にとって望ましいと思う薬はありますか。

 特殊な薬という印象をお持ちになるかもしれませんが、緊急避妊薬の「ノルレボ」(成分:レボノルゲストレル)はそのひとつです。

 性交の後、72時間以内に服用すると妊娠率は1.59%という薬ですが、「日本では性教育が遅れている」などの理由で、昨年スイッチ化が見送られました。人工妊娠中絶は年間17万件もあります。望まれない妊娠を防ぐことができる薬があるのに、日本ではあまり知られていません。

 安全性も確かめられていて、欧米主要国など多くの国では薬局で処方箋なしで買えます。早く飲むほど効果が高いので、医療機関の受診というハードルを設けずに薬へのアクセスをよくすることで、体にも心にも負担が大きい人工妊娠中絶を減らすことができると思います。

 性犯罪の被害という場合もあるだけに、町の女性薬剤師としては残念でなりません。「知らないのは愚か、知らせないのは罪」と言われる緊急避妊薬です。薬局で処方箋なしで取り扱えるよう再検討していただきたいですね。

片頭痛薬、胃薬…スイッチ化に議論のある薬はほかにも

――ほかにもセルフメディケーションという視点でスイッチOTC化が議論になっている薬はありますか

 「トリプタン」という系統の片頭痛の薬も、昨年スイッチOTC化が見送られました。頭痛は、片頭痛のほかにも、緊張型頭痛とか群発頭痛というタイプや、脳内出血や脳腫瘍などほかの病気が原因になることがあります。一度神経内科を受診して診断を受け、片頭痛とわかれば、後は薬局で薬を購入すれば良いのではないでしょうか。医師も団体によってスイッチ化への賛否の判断が分かれていました。

 また、H2ブロッカーよりも胃酸を抑える効果が高い胃薬のプロトンポンプ阻害薬も議論になっていますが、こうした薬のスイッチ化は患者にとって利便性が高まり、セルフメディケーションの推進に役立つ薬だと思います。

――日本ではスイッチOTC化が難しい理由があるのでしょうか。

 スイッチOTC化されると「要指導薬」(薬剤師による説明など対面販売が必要な薬)という区分の薬になるのですが、要指導薬になってしばらくすると通常のOTC薬に切り替わり、ネットでの販売等が可能になります。この仕組みがいろいろな薬のスイッチOTC化にあたっての反対の理由になっています。

 薬剤師の説明が必要となる薬は、いつまでも要指導薬のままにしておく制度が必要だと思います。そうなれば、インフルエンザの薬「タミフル」も、ニュージーランドのように処方箋なしで買えるようにしていいのではないかと思います。

風邪に抗菌薬はいらない

――ヘルスリテラシーという観点から気になるのが風邪の対処法です。風邪で医療機関を受診する人は多いと思いますが、風邪の診療が今、問題になっていますね。

 風邪の9割はウイルスが原因ですから、細菌を殺す抗菌薬は効きません。ところが、細菌感染があるといけないからと「念のため」処方する習慣が定着して、患者の側に「風邪には抗菌薬」という誤解を生んでしまいました。

 不要な薬が使われて医療費が無駄というだけではなく、抗菌薬を不適切に使用すると薬が効かない耐性菌を招くことが国際的に大きな問題になっています。厚労省は2020年までに抗菌薬の使用量を3分の2に減らす目標を立て、そのために「風邪や腸炎などでウイルス性なら抗菌薬を使わない」という内容を盛り込んだ医師向けの手引「抗微生物薬適正使用の手引き」を昨年作成しました。

 風邪薬は対処療法の薬で、風邪を治すのは薬ではなく体の力です。通常は1週間ぐらいで自然に治りますから、安静を心がけて症状がつらければ市販薬を使うという対応でも良いのではないでしょうか。いろいろなウイルスに感染した患者が集まる診療所で、待ち時間を過ごすのもつらいですよね。

――風邪を診療するため医師向けの手引が必要だというのは、医師も習慣で処方してしまうということなのでしょうか。患者は薬局で処方薬を受け取るわけですから、薬剤師がチェックして無用な処方を止めることはできないのですか。

 薬剤師が処方に疑問を持っても、「医師の機嫌を損ねてはいけない」という配慮が働いて疑問を医師に照会することをちゅうちょしてしまうことがあります。このような手引があると薬剤師としても確認がしやすくなります。でも、こんな弱気な考えは医師に失礼ではなくて患者に失礼と思わなければいけませんよね。

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