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コラム

『刑務所しか居場所がない人たち』 山本譲司著…生きるため、罪を犯す障害者の問題を訴え(下)

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 生きるために罪を犯す障害者や高齢者を、どう受け入れるべきなのか。この問題を中高生向けの書籍『刑務所しか居場所がない人たち』(大月書店、1500円税別)にまとめた、元衆院議員で作家の山本譲司さんに、罪に問われた障害者の権利を守り、社会の中で安心して暮らせるようにするための支援について聞いた。(ヨミドクター 飯田祐子)

刑務所が最後の受け皿?

 ――福祉の手が届かなかった人にとっては、刑務所が、最後の受け皿になっているともいえます。日本の社会制度が、それだけ未発達である表れなのでしょうか。

 「落語の中では、与太郎が人々に愛されながら江戸の町で暮らしています。日本には元々、知的障害のある人などを地域で受け入れて、みんなで面倒をみる社会があったのです。ところが明治以降に近代国家を目指す中で、隔離収容が進み、町中には障害者の居場所がなくなっていきます。そして、刑務所を生活の場とする人が出てきました。欧米でも同じような時代があったのですが、既に数十年前から障害者が地域で暮らすようになってきています。日本は、欧米諸国から大きく後れを取っているのです」

 ――新著では、犯意があったわけではないのに、巡り合わせの悪さや周囲の誤解などから罪に問われたケースがいくつも出てきます。本人が事情を説明していれば、起訴されることも有罪になることも避けられたのでは……とも思われます。自分の立場を主張するのが難しい人たちの権利を守るには、どうしたらよいのでしょうか。

 「日本では、知的障害者が犯罪被害に遭った場合などに本人が裁判で証言しても、『証言能力がない』として、証拠として認めてもらうのが難しいという現状があります。逆に容疑者になったときには、状況をよく理解せず、取り調べで問われるままに『やりました』と言い、それが自白とされて有罪になってしまうこともあります。本来、弁護士が彼らの権利を守るべきなのですが、障害のことをよく分かっていなかったり、熱意に欠けていたりして、役割を十分に果たせていない場合も多いのです。欧米は、日本と逆です。アメリカでは障害者が犯罪被害に遭うと、その加害者は重い罰を受けることになります。また、障害者が加害者になったときは、容疑者のIQが基準より低ければ、知的障害の専門知識がある裁判官らが審判に当たります。イギリスでは、知的障害者などの取り調べには、本人の理解を助け、権利を守ってくれる専門家が立ち会います」

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