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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

コラム

見る?見ない? テレビの中の「認知症」

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漫画・日野あかね

大好きなドラマでも…

 認知症の人を介護している人は「介護する日々」を客観的に捉えることが困難になるときがあります。そんな生活の中で、認知症のことを扱ったテレビ番組や映画が、第三者の視点で考えさせてくれることがあります。

 ところが母さんは、「わざわざテレビや映画でまで、認知症のことを見たくない」タイプ。毎週楽しみに見ていたドラマでも、登場人物の1人が認知症になっただけで「もう、見ない」と、その時間になるとテレビをパチリと消してしまう徹底ぶりです。

 私はというと、ただ暗いだけの絶望的な内容だったり、無理やり感動的に仕上げたものなどは見たくありませんが、救いがあって前向きな内容ならば見たいと思っています。

 「認知症のことを取り扱ったテレビ番組や映画を見るかどうか」というのも、「認知症介護あるある」のようで、認知症介護仲間たちと熱い議論になったことがありました。そして、「どんな内容でも見る」「絶対に見ない」「内容による」と3つのパターンに分かれました。

 母さんがかたくなにそういった番組や映画を拒む様子は、「なにもそこまで……」と理解に苦しむこともありましたが、思いの外、母さんと同じような意見の介護仲間がいたのです。「あえて映像でまで見たくない」と考える人も、少なくないのかもしれません。

「認知症が治った!」タイトル見て期待、内容知り落胆

 さらに、「認知症が治った!」と銘打ったテレビ番組や週刊誌のタイトルについても介護仲間たちと語り合ったことがあります。認知症で最も多いアルツハイマー型や、父さんのような脳血管性認知症は、残念ながら現代の医学では治すことはできません。そして、そうした番組や記事は、認知症の原因となる病気は様々で、中には治るものもある……という内容であることが、じっくり見れば分かるのですが、新聞のテレビ欄、番組の宣伝、電車の中づり広告などでは「認知症が治った!」というメッセージだけがクローズアップされがちです。

 ある程度、認知症に関する知識が身についた今でこそ、その内容についてはだいたい想像ができます。しかし、そうでなかったころはそういった番組や週刊誌のタイトルを見るたびに「父さんは治るかもしれない」と、かなわぬ希望を抱くこともありました。

悪気のない言葉、対応に苦慮

 認知症について詳しくない知人などが、「認知症が治るって、テレビでやっていたよ」と教えてくれることもあります。この一切悪気のない言葉にどう対応するかが、まさに「認知症介護あるある」なのです。

 母さんは、「でも、うちの旦那は治らない認知症だから」とベテラン介護者ならではの返しをしていますが、介護歴が浅い人ほど、そういった情報に一喜一憂させられることがあるようです。だからこそ、大きな期待を持たせるようなテレビ番組や週刊誌のタイトルに、私はいつも違和感を抱いてしまうのです。

 ちょっと大げさかもしれませんが、認知症の当事者はもちろん、認知症の人を介護している人たちは、良きにつけしきにつけ、「認知症」に関することに敏感になってしまいます。たかがテレビ番組のタイトルひとつにも、心の中に荒波が立ったり、逆に穏やかになったりしながら、日々の介護生活を送っているのかもしれません。(岡崎杏里 ライター)

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認知症介護あるある~岡崎家の場合~

岡崎杏里(おかざき・あんり)
 ライター、エッセイスト
 1975年生まれ。23歳で始まった認知症の父親の介護と、卵巣がんを患った母親の看病の日々をつづったエッセー&コミック『笑う介護。』(漫画・松本ぷりっつ、成美堂出版)や『みんなの認知症』(同)などの著書がある。2011年に結婚、13年に長男を出産。介護と育児の「ダブルケア」の毎日を送りながら、雑誌などで介護に関する記事の執筆を行う。岡崎家で日夜、生まれる面白エピソードを紹介するブログ「続・『笑う介護。』」も人気。

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日野あかね(ひの・あかね)
 漫画家
 北海道在住。2005年にステージ4の悪性リンパ腫と宣告された夫が、治療を受けて生還するまでを描いたコミックエッセー『のほほん亭主、がんになる。』(ぶんか社)を12年に出版。16年には、自宅で介護していた認知症の義母をみとった。現在は、レディースコミック『ほんとうに泣ける話』『家庭サスペンス』などでグルメ漫画を連載。看護師の資格を持ち、執筆の傍ら、グループホームで介護スタッフとして勤務している。

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