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【いのちの値段】地域をつなぐ(6)居場所を育む「村」開く

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 「生協のんびり村」(愛知県東海市)は、未完成のまま呼吸している。手作りのピザ がま でピザを焼く町野幸雄さん(77)も南医療生協(本部・名古屋市)の他の組合員も、同じ思いだ。地域と共に育っていく。

 3600平方メートルの敷地に、同生協の医療や介護事業と連携したグループホームや小規模多機能ホーム、長屋風の共同住宅、地域交流館、喫茶店などがある。どの建物も木造。農園もある。どこにも囲いがなく、風が通り抜けていく。

 暮らしの支援を形にした“村”を求め、地域の組合員7000人が、総工費3億円のうち7000万円を出資した。市の援助3000万円や借入金とあわせ、2007年に開村。職員27人、ボランティアは25人。「収支はトントン」だ。

 町野さんは、圧延機のオペレーターを40年間、務めた。1200度に熱した鋼材を最善の状態で切断する。寡黙な職人だった。60歳の定年退職後は、やることがなく、パチンコ店に通いつめた。1年間、開店から閉店まで、多い日で10万円使う。退職金もつぎこんだ。

 村からボランティアを頼まれ、09年以降、ウッドデッキや ひさし づくり、 はり のワックスがけなどを手がけた。炎天下の作業で脱水症に陥っても手を止めない。なぜ、やれたのか。やろうと思った。そしてやってみたらできたのだ。大工仕事は自分が達成したことが見える、残る。挑戦し、体験しながら技術のレベルもあがる。

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