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宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

パソコン・AI時代の小学生 字を書く宿題、そんなに必要ですか?

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 あっという間に梅雨が明けて、猛暑の季節がやってきました。軽くエアコンを付けて寝ても、朝起きれば子どもたちは汗をかいて、シーツまでぐっしょり。体調管理に神経を使わなければならない季節です。そんな中、登下校時に水を飲んではいけない小学校もあると聞き、驚いています。

ひたすら字の練習 どれほどの意味が?

パソコン・AI時代の小学生 字を書く宿題、そんなに必要ですか?

きょうだい仲良く遊んでくれて助かります

 この4月より、娘が小1年生になりました。幼稚園では自由に遊んでいる時間がメインだったため、環境が大きく変わりました。いろんな教科の授業が始まり、宿題も毎日あります。親は送り迎えをしません。娘は活発で、落ち着きがある方ではないのですが、小一時間、授業を座って聞くのは問題ないようでホッとしています。給食もモリモリ食べ、毎日うれしそうに学校に行っています。

 ですが、日々の生活で、かなり疲れているように見えます。私の仕事があるため、下校後は弟が通っているナーサリー(認可外の保育施設)のアフタースクールに行ってもらい、私が終業後に2人を迎えに行くのですが、その時点ではもう眠そうにしています。ご飯を食べて、宿題をするのが精いっぱい。よほど疲れているのか、8時台には就寝してしまいます。

 娘はお絵かきをしたり、ダラダラ遊んだりする時間をとても愛しているのですが、宿題を優先するしかありません。国語だと、ひらがなと漢字を何回も練習して、赤字で直されたものを書き直します。本人なりに真面目に書いているようですが、腕や指の力がまだ弱くて筆圧がコントロールできません。その結果、赤字で直され、どうしても時間がかかってしまいます。

 宿題自体は全部で30分もかかりませんが、見守っていると、「毎日積み重ねるとすごい時間を字の練習に割くことになるのだなあ」と考えてしまいます。日本語は、かなに漢字と、文字の種類が多いので、初等教育で読み書きをしっかり学ぶ必要があるのは理解できます。しかし、時間と体力には限りがあるし、高学年になって筆圧がしっかりしてきたら、自然と字は 綺麗(きれい) に書けるようになると思うので、今はもう少しゆっくりさせたい気もします。

筆跡で人柄を見る? 手書きの機会は少なく

 友達のお子さんが通っている有名小学校の先生は、「字が汚いといかに人生で損をするか」ということを 滔々(とうとう) と述べられ、最初に字を書く練習をしっかりやることの大切さを説かれたそうです。他にも、いろんな小学校の小1ママに聞いたところ、やはり1学期は字の練習に明け暮れたとのこと。そういった教育はメジャーなようです。

 しかし、今の子どもたちが大きくなる頃には、ますます手書きの字を人に見られる機会は少なくなるのではないかと思います。入学試験の願書、就職のエントリーシートなども、「筆跡で人柄を見る」という時代は終わっているのではないでしょうか。

 時代とともに人間に求められる仕事は変化します。機械化によりなくなった仕事は枚挙にいとまがありません。パソコンやインターネットはすでに普及し、今はAI(人工知能)の進歩が注目されています。子どもたちが大人になる頃に、どのような仕事が必要とされるのか、未知数です。

もっと遊びや人との関わりを大事に

 親としてどのような経験をさせ、教育を受けさせるか、答えを求めている方が多いことと思います。私は、文章の読解などは非常に重要だと考えていますが、ただ文字を綺麗に書いたり、早く計算したりするトレーニングには限られた時間をあまり割きたくありません。将来、機械やAIに取って代わられそうな能力や、応用の利かない単純な能力よりも、遊びや情操教育による多様な経験や、人と人との関わり合いに時間を取りたいと思っています。特に私の娘は、遊んだり、ぼんやりしたり、絵や工作を量産したりする時間がないと不満なタイプなので、あれもこれも無理に学習させて結果的に無駄でした、ということは避けたいのです。

 もうすぐ1学期が終わりますが、娘の長い学校生活は始まったばかりです。まだ得意不得意、向き不向きはわからないのですが、勉強を楽しむとまではいかなくても、嫌いにならずに長い年月続けていけるよう、気を配っていきたいです。(宋美玄 産婦人科医)

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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14件 のコメント

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朝顔

ご自分の思うように子育てをされればよろしいかと思います。 ただ、前のコメントにもありましたように、指先を使うことは脳の刺激に良いようです。私は6...

ご自分の思うように子育てをされればよろしいかと思います。

ただ、前のコメントにもありましたように、指先を使うことは脳の刺激に良いようです。私は60歳を超えましたが、かつて言葉が詰まるように感じていたところ、英語の文章の筆記を始めて暫くしてウソのように解消しました。それまでキーボードをたたくことばかりで最初は簡単な英文すら思うようにペン運びができませんでしたが、今はスラスラ、それに応じてアタマの調子も良いようです。ボケ防止にも指先を動かすのが良いと言われますよね。
それと読み書きソロバン(計算)は江戸時代の寺子屋からの日本の良き教育文化だと思います。いくら電卓という文明の利器があっても、これはパターン認識の鍛錬でしょう。将棋の天才羽生さんも小さい頃から○○式に通っていたとか。ウチの子もそうでしたが何故か理数系は得意でしたね。

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基本を繰り返すこと

人生それぞれ

「~に何の意味があるのか」という問いは教育現場ではいつも繰り返されます。この疑問は大切です。   しかし、基本を繰り返すごとに脳細胞のシナプスは...

「~に何の意味があるのか」という問いは教育現場ではいつも繰り返されます。この疑問は大切です。
  しかし、基本を繰り返すごとに脳細胞のシナプスは強化され信号伝達は迅速になりネットワークが構築されていくのです。たとえば、左手で書いてみるのも良いそうです。鏡文字も発達上意義があるので叱る必要はないそうです。余裕を持ちつつ、繰り返し繰り返し繰り返すことはやはり必須でしょう。お母さんが働いている放課後のあいだにお子さんが好きな遊びに熱中できるように保母さんに頼んでおいてはいかがですか?そして低学年のあいだはお母さんが子供と一緒に宿題に時間を費やしてあげてください、一緒に遊ぶのは週末にして。それが働くお母さんの宿命です。でも、その習慣を早めにつけておくと、もう少ししたら、お母さんが働いている放課後のあいだに宿題を片づけてしまえるようになりますよ。

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