Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
「朝が苦手」は遺伝かも…無理な早起きは事故やうつ、心疾患のリスク 夜型の人に理解を!
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に科学的見地からビシバシお答えします。今回は「朝型夜型ってどうやって決まるの?」という疑問を取り上げます。朝型生活バンザイ! みたいな記事をよく見かけますが、誰でも簡単にできるわけではありません。
夜型の人は寝坊だが睡眠不足に強い
ワールドカップでTVの前にくぎ付けになった人も多かったと思います。時差の関係で深夜帯での放送が多かったため、睡眠不足に悩まされたのではないでしょうか。特に、決勝トーナメントでの日本対ベルギー戦、燃えましたね。皆さんもご覧になりましたか? 午前3時からの放送でしたが、いったん仮眠をとってから観戦したか、仮眠をとらずに起き続けて観戦したか、どちらだったでしょうか? 実は、どちらのパターンが楽かによって、その人が朝型か夜型か、ある程度分かります。
朝型の人は「早寝早起きが得意だけれど、睡眠不足に弱い」、夜型の人は「宵っ張りで寝坊しがちだけれど、睡眠不足に強い」という特徴があります。そのため、早朝に何かをしなくてはならない時に、朝型の人はいったん仮眠をとってから起きてやるのに対して、夜型の人は眠らずにやってから仮眠をとることが多いのです。実際、研究や診療に使う「朝型夜型調査票」にも似た質問項目があります。
睡眠習慣の差は生物時計の違いから
さて、このような朝型夜型傾向は、人口の中で正規分布することが分かっています。私たちが行った調査では、夜型傾向の人は成人の約30%、特に強い夜型傾向の人は8%ほどいました。一方、朝型傾向の人も成人の約30%、特に強い朝型傾向の人は6%ほどいました。このような睡眠習慣の違いが生じる脳内メカニズムには、生物時計(体内時計)の時を刻むスピードが深く関わっていることが明らかになっています。
生物時計は私たちの脳の奥深く(両耳をつなぐ線の真ん中あたり)にある 視交叉上核 と呼ばれる小さな神経核が、その役割を担っています。視交叉上核の神経細胞は、約24時間周期で活動レベルが変動するという他の細胞にはない特殊な機能を持っています。この視交叉上核が生み出す約1日の活動周期こそが、睡眠・覚醒やホルモン、自律神経をはじめとする様々な生体リズムを形成しているのです。ラテン語では「約がcirca」「1日がdian」であるため、生体リズムはサーカディアンリズム(circadian rhythm)とも呼ばれます。
生物時計の周期の長さは人によって異なります。時を刻むスピードが速い人の周期は24時間弱と短く、スピードが遅い人は24時間を大きく超えます。特殊な実験室で多くの人の生物時計の周期を正確に測定すると、23時間50分から24時間30分まで40分ほどの開きがあります。小さい違いに思うかもしれませんが、これはたった一日のズレ幅ですので、生活に及ぼす影響は非常に大きいのです。
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