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新時代の「セルフメディケーション」

健康・ダイエット・エクササイズ

高齢者は「体重維持」をセルフケア…新時代のセルフメディケーション

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メタボの保健指導…参加者が増えない悩み

 栄養士は低栄養だけではなく、栄養過多のメタボ指導でも活躍している。腹囲の測定を行うメタボ健診は2008年に始まり、丸10年を迎えた。

 正式には「特定健康診査」という名称で、40歳から74歳を対象に実施する。男性は腹囲85センチ、女性は90センチ以上あるいはBMI25以上に加え、血圧、コレステロール、血糖値で基準範囲を超える項目があると、保健指導の対象になる。

 特定健康診査の実施率は全国平均で50%(2015年度)。大企業など健保組合は70%を超えているが、自営業者や退職者が多い市町村の国保は36%(同)と低い。さらに、健診の結果を元に実施される保健指導を完了した比率となると、全体で3割台、市町村国保では1割台に低迷している。

 保健指導が実施できれば、対象者の多くで体重や腹囲の減少、血液検査の数値の改善などの結果が出ることがわかっているが、参加者が思うように増えないのが多くの自治体の悩みだ。

市の保健センターに来てもらう…楽しく「脂肪燃焼ランチ」

 大和市もメタボ健診の実施率が3割台、保健指導の実施率は1割ちょっとだった。そこで保健指導の参加者を増やそうと、2013年から栄養士らの提案で保健指導の内容を見直した。「メタボの指導は市の保健センターに来てもらうのが最初の1歩。足を運ぶこと自体が行動を変えるきっかけになる」と田中教授たちは考えた。

 保健指導の初回には、楽しめる体験型のイベントを盛り込んだ。「食事コース」「運動コース」「個別相談会」の3種類で複数の日程を設けて、どれかに参加するように案内を郵送する。

 最も人気がある食事コースでは、300円の実費負担でランチを用意。代謝を上げる豚肉を使った「食べて代謝アップ!脂肪燃焼ランチ」「カルシウムたっぷり骨粗しょう症予防ランチ」など、毎回テーマを変えておいしく健康な食事を食べながら自己管理を学ぶ会にした。運動コースではボクシングの動きを取り入れた体操「ボクササイズ」など楽しめる運動を体験できる。個人的に話をしたい人は「個別相談会」を選ぶことができる。

保健指導終了者が1割から3割に増加

 従来は集まって話を聞いてもらっていたが、イベント型を採用してから参加者は少しずつ増えており、保健指導の実施率は1割から3割まで上昇。希望があれば訪問相談も行っている。保健指導実施から1年後に調べてみると、平均で体重は1キロ、腹囲は2センチ減少する結果が出ている。

 必要とわかっていても、習慣を変えるのはなかなか難しい。高齢者の栄養不良は自覚が乏しいこともある。しかし行政や専門家が、上からの情報提供ではなく、指導を受ける側の目線に立った動機付けの工夫をすることで、生活習慣の改善につながっている。「新時代のセルフメディケーション」は、セルフケアの支援が大切なポイントだ。(渡辺勝敏)

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