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新時代の「セルフメディケーション」

健康・ダイエット

高齢者は「体重維持」をセルフケア…新時代のセルフメディケーション

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栄養状態の改善で介護予防は可能

 2013年に始めた田中教授たちの訪問栄養相談は、確かな結果を出してきた。初年度は、介護アンケートのデータでチェックして低栄養が疑われる高齢者は356人いた。そのうち、モデル地区に定めた32人に訪問栄養相談を実施し、2年後に状態を確かめた。すると重症化(要介護になるか死亡した人)の比率は、相談実施者では5.3%(2人)に対し、その他では22.5%(72人)に及んだ。

 その後、訪問栄養相談をルーチンにし、年200人近くを訪問するようになった。訪問相談を実施すると、その2年後に重症化する人が、訪問しない人の3分1以下になる傾向がデータにはっきり表れている。田中教授は「栄養が足りないことに気づいて、自分なりの食べ方が見つかれば、体重の回復はうまくいきます。元気になるので効果が実感できるんですね。訪問相談は喜ばれています」と話す。

 訪問相談で効果が出るのには理由がある。市の施設などで集団での栄養指導を企画した場合、来ることができるのは元気な人で、むしろ出て来ない人の中に「要介護」への危険が迫っている人がいるのだ。

 栄養士が訪問すれば、必要な人にアドバイスができる。加えて自宅を訪問すると、栄養が不足するそれぞれの事情が見えてくる。

 後期高齢者の低栄養には、がんや糖尿病といった病気のほか、「近くにスーパーがないので買い物が大変」「一人で食べるのでどうしても軽い食事ですませてしまう」、あるいは「年金が少ないので食費に回しにくい」といった経済的な事情など社会的な要因が関係しているケースが多い。動作が不自由なため食べ残しが放置され、ゴミ屋敷のようになっている高齢者の家庭も珍しくないという。

カロリーアップが必要…ポテトチップ、メロンパンでもOK!

 田中教授たちは訪問先の家庭の事情に応じて、配食や食材の宅配サービスを紹介したり、一度に食べられず無駄になってしまうという人には日持ちのする食品を提案するなど、それぞれに合ったきめ細かなアドバイスをする。

 「お好きだと言うので、ポテトチップをお勧めした方もいます。メタボにはよくありませんが、カロリーアップが必要な低栄養の高齢者には役に立ちます。脂っこいものや甘いもの、カロリーの高い食品は避けるのが望ましいというメタボの栄養知識を、後期高齢者になっても守っていて、体重を低下させてしまう方は少なくありません。優先順位から言えば、体重減少は最も注意が必要なのです」と田中教授は指摘する。

 糖分が多いからと控えていた大好きなメロンパンなどの菓子パンを、栄養士のアドバイスで食べるようになって、体重を回復した人もいるという。

 同市健康福祉部の目代もくだい雅彦部長は「新たに介護が必要になる人が減り、医療費や介護給付費を低減する実績が上がっています。行政としては、訪問栄養相談を積極的に推進しています」と言う。同市は、常勤栄養士をここ数年で3人から6人に増やして活動を後押ししてきた。

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