その医療 ホントに要りますか?
医療・健康・介護のコラム
治療を負担に感じる人ほど死亡率が高い!? 糖尿病にストレスは大敵
糖尿病の患者が増えています。糖尿病には様々な薬が使われていますが、治療にはどんな注意が必要なのでしょうか。
脳梗塞、心筋梗塞、失明…怖い合併症
厚生労働省が2016年に実施した国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人は、初めて1000万人の大台に達したと推計されました。前回12年の調査より約50万人増え、1997年の初回調査に比べると1・5倍近くに上っています。
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度が高い状態を指しますが、怖いのは様々な合併症につながることです。合併症には、血管が傷ついて起きる脳梗塞や心筋梗塞、失明の恐れがある網膜症、腎臓の働きが低下して人工透析になりかねない腎症があります。
治療は、血糖値をコントロールすることが柱になります。血糖値の上昇は、食べ過ぎや運動不足から起きることが多いので、食事療法と運動療法が基本です。それでも下がらない場合に薬物療法が行われます。
血糖値をどこまで下げるべきかの指標としては、過去1~2か月の血糖の状態を示すHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)が使われます。日本糖尿病学会の治療指針では、合併症を予防するための目標としてHbA1c7%未満、さらに血糖正常化を目指す場合に6%未満――を掲げています。
血糖値を強力に下げると意識障害などのリスクも
もっとも、血糖値は下げれば下げるほど良いわけではありません。海外の臨床試験で、HbA1c6%未満を目指して強力に下げる治療と、7~8%未満に穏やかに下げる治療を比較したところ、強力に下げた方が死亡率が高まる、という結果になったからです。血糖値が下がりすぎ、意識障害などに陥る低血糖が増えるからだとみられています。
治療効果の分析に詳しい名郷直樹医師(東京都国分寺市の武蔵国分寺公園クリニック院長)は「糖尿病学会のHbA1c6%未満という治療目標は、6%未満を目指すと死亡率が高まるという臨床試験結果と矛盾している」と指摘します。実際、米国内科学会は、HbA1cは7%台を目指すよう勧告しています。
日本人の糖尿病患者を対象に、血糖値、血圧、脂質の値をいずれも強力に低下させる治療の効果を調べる臨床試験の結果が昨年発表されましたが、やはり心筋梗塞や死亡のリスクが下がる効果ははっきりしませんでした。
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