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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

医療・健康・介護のコラム

夏のスポーツで怖い熱中症 命を守るために知っておくべきこと

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 どうも、大関です。いよいよ夏本番、暑くなってきましたね。夏は合宿があったり、夏休みで競技に集中できたりすることから、スポーツ選手を大きく成長させる季節と言えます。厳しい暑さの中での練習に耐えることで、精神的にも一皮むけたと感じさせるのかもしれません。しかし、夏のスポーツで絶対に注意しなければならないのが熱中症です。一歩間違えば命を落とすことにもつながります。暑さ指数である「WBGT」という言葉について、今回のコラムでぜひ覚えて下さいね。

 中学生ソフトボール選手のケースです。

 Kさんは中学1年生のソフトボール選手です。日曜日の練習は、午前9時から12時までと、午後1時から4時まで。7月中旬の日曜日、午前9時の時点で気温が29度ありました。バッティング練習を行っていた11時ころ、Kさんは気分が悪くなりましたが、自分の打つ番が終わってから休もうと思いました。すると突然目の前が暗くなり、その場にうずくまってしまいました。

予防が一番 指針に沿って行動を

 当たり前ですが、熱中症は予防が一番大切です。練習や大会の責任者は、その日の気温を把握しておく必要があります。日本体育協会(現在の日本スポーツ協会)の熱中症予防運動指針では、気温(乾球温度)が28度以上は「警戒」で、積極的に休息をとるべきとされています。31度以上は「厳重警戒」で、激しい運動は中止。35度以上になった場合は、運動は原則中止としています。

熱中症予防運動指針(日本体育協会)を改変

 ただ、同じ温度でも湿度が高いと起きやすいのが熱中症です。そこで、乾球温度よりも、基準として推奨されているのが、湿度などを考慮した「WBGT」(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)です。暑さ指数とも呼ばれます。WBGTでは31度以上になると原則として運動は中止することとされています。

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タニタの黒球式熱中症指数計 熱中アラーム TT-562

 WBGTの計測器は市販されており、夏の練習を行う上では今後必携のアイテムになっていくでしょう。最近ではその日のWBGTをメールで知らせてくれるサービスもありますが、人工芝では高くなるなど環境によって違うため、基本的には練習を行う環境で測ることが重要です。

水分と塩分補給 休憩中は防具を外す

 気温やWBGTが高い時、無理をしないことは当然です。気を付けたいのは、練習中、こまめに水分と塩分を補給すること、直射日光を避けるために帽子を着用すること、防具をつけるスポーツでは休憩中に熱を逃がすよう防具を外しておくことなどです。また、急に気温が高くなるなど、体が暑さになれていない場合はとくに注意してください。

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

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4件 のコメント

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教員としての資質

子供を守り隊

部活の顧問は各都道府県教育委員会からの運動部活動における望ましい指導のあり方についてとの書面による通達が校長宛なされていると思います。私立ははっ...

部活の顧問は各都道府県教育委員会からの運動部活動における望ましい指導のあり方についてとの書面による通達が校長宛なされていると思います。私立ははっきりとしませんが!その中に於いて熱中症対策も明記されてますがしかし昭和的な発想や軍属的思考が教師の中に根性論や旧態依然として残存し 守られて無い学校も多くあります。その結果学校や家庭生活、学習塾等に体調的に影響が出ている事を理解して頂きたい。学校全体や学級で出来ない事を部活動で強制的に行う指導者は教員としての資質を疑わざる得ません!勝利優先が求められるのは職業としてのプロの世界で求められる事ではないかと考えますが?

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熱中症や関連の疾患の発生を予防するために

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

JFAからも熱中症ガイドラインが出ていますが試合時間やウォーターブレイクなども含めて今後の修正も必要でしょう。 天然芝のグラウンドでは水以外の持...

JFAからも熱中症ガイドラインが出ていますが試合時間やウォーターブレイクなども含めて今後の修正も必要でしょう。
天然芝のグラウンドでは水以外の持ち込みが禁止されているケースもありますが、飲水場場所など運用を変えればよりプレーイヤーズ・ファーストの制度や設備に近づくでしょう。

それがなぜ重要かと言えば、熱中症からの重症の全身炎症が怖いのはもちろんですが、その前段階での判断力の低下や筋骨格の動きのミスが重症整形疾患の温床だからです。
Jリーグのデータでも試合後半での非接触の損傷の多さがよく知られています。
ということは、暑さによる熱疲労の蓄積や純粋な疲労の蓄積と付き合いながらの運用を考える必要があります。
試合数が増えればターンオーバー制やベンチ交代も柔軟に考えたほうが良いでしょう。
学生さんの場合は勉学や家事との両立のためにも大事です。

絶対に怪我や病気をしたくなければ何も運動しなければいいわけですが、スポーツには学びや楽しみがあります。
その中で怪我や病気は避けられない部分もありますが、想定できる状況に対して医療も競技も予防策の普及を進め、救急発生時のインフラを整えていく必要があります。
その中心にいるのは整形外科医や救急医だと思いますが内科医に放射線科医、精神科医その他コメディカルや指導者も含めて地域差や文化差も踏まえたシステムを提言していく必要があります。
また、こういった未整備の領域はビジネスチャンスでもありますので各企業さんも前向きに取り組んでいただければと思います。

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体験から科学的な対処をを身に着ける

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

スポーツや教育の現場の意識が変わるのは難しい事ですね。 世代交代が進み、価値観の多様な指導者が林立することによって少しずつ変わっていくのではない...

スポーツや教育の現場の意識が変わるのは難しい事ですね。
世代交代が進み、価値観の多様な指導者が林立することによって少しずつ変わっていくのではないかと思います。
世の中は結果論と精神論で動いています。
分かりやすいからです。
また、他の社会への連続性や人材の流動性を考えれば、それらの完全否定も間違いということになります。

過保護になってもいけませんし、レスキューの準備をしながら多少の経験をさせるのがいいと思います。
自分や近しい人が体験していないものを人は肌で理解することはできません。
軽症の熱中症の経験が重症化を防ぐこともあります。
全てはさじ加減と準備の問題です。

温度や湿度の基準もそうですが他にも様々な要因はあります。
いくつかの種類の人工芝は高温になりやすいですね。

とんでもない指導や指導者を是認するわけにはいきませんが、困難な中での仕事に対する柔軟な対処や思考の経験を奪うこともまた良くないのではないかと思います。

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