子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
不慮の事故(5)転んで水筒が腹部直撃
不慮の事故では、小児科医で緑園こどもクリニック(横浜市)院長の山中龍宏さんに聞きます。(聞き手・萩原隆史)
思いがけない事故の中には、本来危なくないはずの日用品が原因になるケースもあります。
ある雨の朝、7歳の小学生男児は登校中に走ってつまずき、勢いよく転んでしまいました。
その後、ぐったりして何度も吐いたため受診。精密検査で大変なことがわかりました。 膵臓 断裂などの内臓損傷と診断されたのです。3度の開腹手術で、膵臓の半分と 脾臓 を摘出。膵臓は血糖、脾臓は免疫にかかわる重要な臓器のため、将来にわたって糖尿病や感染症の大きなリスクを負うことになりました。
男児は当時、水筒を首から斜め掛けにしていました。転んだとき、水筒がちょうど立つような形で地面とおなかの間に挟まり、転倒の衝撃が一点に集中したと考えられます。子どもはこけやすく、反射的に手をつく動作も大人ほど上手ではありません。その上、内臓脂肪が少なく腹筋も弱いため、内臓損傷のリスクが高いと言えます。
報告を受け、同種事故があるかどうかを新聞各紙の過去記事のデータベースで調べましたが、見当たりませんでした。かなり偶発的な事故と言えなくもないのですが、実際に起きたという事実は重いものがあります。
今回、大手術を伴う入院を余儀なくされた男児の年齢層(5~9歳)では、1件の死亡事故の背後に、入院90件、医療機関の外来受診4700件の事故が潜んでいることが、専門家の間で知られています。
つまり、男児の事故も「たまたま水筒の当たり所が悪かった」で済まさず、氷山の一角とみることが肝心です。対策としては、細身の水筒にしてランドセルに入れられるようにする、ふたの部分を大きくして体に衝突した時の力を分散する、など水筒の構造見直しを検討することも必要です。
【略歴】
山中龍宏(やまなか・たつひろ)
1947年、広島市生まれ。小児科医。東京大医学部卒。子どもの事故防止に取り組むNPO法人「セーフ キッズ ジャパン」(東京)理事長、消費者庁の消費者安全調査委員会専門委員。
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学校によっては、「水筒を首から斜め掛けにしなさい」と指導されているそうです。昨年の夏、小学1年生の娘に「邪魔だしランドセルに入れたら?」と聞いたら、「先生がランドセルに入れないでと言っていた」とのこと。こんな状態では、いずれまた似たような事故が起こりそうですね。
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この水筒は倒れにくいので、その上に倒れこんだ子供の腹に食い込んだ。
昔子供のころ使っていたのは、円盤型の水筒だったと思うが、あれなら倒れやすいから、子どもが上に倒れこんだら水筒も横に倒れて、打撃を与えることにはならなかっただろう。
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