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医療大全

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【いのちの値段】地域をつなぐ(2)支えあい健康守る場所を

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 北海道夕張市中部の清水沢地区。小川正隆さん(68)は、炭鉱で出た不要な岩石の山、「ズリ山」の頂にいた。眼下に、かつて働いた北炭夕張新鉱周辺の炭鉱住宅群が広がる。一帯は将来、街の拠点化(コンパクトシティー)の中心地となる。

 2007年の市の財政破綻から11年余。人口は年間400人ペースで減り、8300人になった。41%台だった高齢化率は50%を超え、全国の市で最も高い。

 市立診療所は昨年、指定管理者が代わったが、在宅医療を重視し、多職種が連携する方針を踏襲した。歯科を含め常勤医は3人だ。

 最盛期の夕張で理容店を営んだ小川さんの義父(91)は、ここから車で5分のケアハウスにいる。1981年のあの炭鉱事故の日。義父が見せた表情を、小川さんは忘れられない。

 小川さんの安否は不明で、親戚は喪服を用意した。午後6時過ぎ、小川さんが夕闇のバス停に着いた。30メートル先にポツンと たたず む白ワイシャツの義父が、手を振った。しわくちゃの顔で。

 病気になっても「空っぽ病み(仮病)」だと笑い飛ばし、仕事ずくめだった義父。その義父もこの数年で老いた。緑内障や白内障に続き、今年4月に 帯状疱疹たいじょうほうしん を患うと、急速に衰えた。まな娘で小川さんの妻の実千代さん(66)がどう励ましても、反応に力がない。

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