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【いのちの値段】地域をつなぐ(1)脱「病院依存」夕張の挑戦

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【いのちの値段】地域をつなぐ(1)脱「病院依存」夕張の挑戦

夕張市立診療所の前で、炭鉱の街だった夕張について語る小川さん(北海道夕張市で)=沼田光太郎撮影

 私たちは変わることができる。北海道夕張市立診療所前に立ち、小川正隆さん(68)はその思いを強くする。この建物はかつて、171床の総合病院だった。

 石炭が「黒いダイヤ」と呼ばれた1960年代、夕張市は11万人超の人口を誇った。小川さんは68年、18歳で炭鉱の電気技術者の職に就いた。77年、北炭夕張新鉱へ移る。4年後、93人が死亡する爆発事故が起きた。地下810メートル。その日、たまたま予定が変わり、事故現場と別の坑道にいた。そして、閉山――。

 「炭鉱から観光へ」。石炭産業の衰退を受け、市は遊園地など多施設の大規模開発を進めた。2007年、353億円の赤字を抱えて破綻し、財政再建団体になる。当時の人口は1万2600人。高齢化率は41・7%。小川さんは「石炭の歴史村」本部長の職を失った。

 市民は、豊かだった時代のまま病院に依存することに慣れていた。感冒薬、湿布、鎮痛剤など薬は望むままに出る。病院は社交の場で、「今日は具合が悪いから行かない」と笑う。タクシー代わりの救急車。高齢者を「預ける」感覚の社会的入院も多かった。

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