漫画家 柴門ふみさん
一病息災
[漫画家 柴門ふみさん]乳がん(4)検査の日には ご褒美を
ホルモン療法は5年続いた。支えてくれたのは、愛犬のリンコだ。
2013年12月、夫で漫画家の弘兼憲史さんが生後3か月のコーギー犬をプレゼントしてくれた。朝夕、近くの公園へ散歩に連れて行く。手術の日は出張していて、入院中も1度しか見舞いに来なかった夫がくれた「気まぐれな贈り物」。おかげで、早寝早起きの習慣ができた。
治療は15年に終わったが、今も年1回、マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)の検査に行く。普段はがんを忘れていても、その日になると緊張する。「一生気をつけていくしかない」。この日はご褒美の日だ。買い物に行ったり、高級なおすしを食べたりと、楽しむようにしている。
がんを公表したくない時期もあったが、「検査で初期のうちに発見できたことを多くの人に伝えられたら」と今は思う。「私もよ」と打ち明けてくれる友人も。同じ体験をした人がいることで安心できた。
仕事には優先順位をつけた。体力を使う漫画連載は今しかないと思い、温めていた大人の女性の生き方がテーマの「恋する母たち」=女性セブン(小学館)で連載中=に取り組む。「若い頃には見えなかったものが、ようやく描ける」と感じている。
(文・安藤奈々、写真・武藤要)
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漫画家 柴門ふみさん(61)
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