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「良い睡眠」に高まる関心…仕事の効率向上狙い、社員を支援する企業も

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 働き方改革が注目される中、効率的に働くポイントとして、「眠り」への関心が高まっている。質の良い睡眠は単なる休息にとどまらず、仕事への意欲や創造性も向上させると認識されるようになった。社員の睡眠改善の取り組みを企業が支援する動きもある。(福士由佳子)

腕時計型センサーを24時間装着

「良い睡眠」に高まる関心…仕事の効率向上狙い、社員を支援する企業も

腕時計型センサーを装着した大熊さん。社員向けサイトで紹介される快眠のコツも、まめにチェックしている(東京都内で)

 「朝に、頭がボーッとすることがなくなった。出勤してすぐ仕事に取りかかれるようになり、無駄が減りました」

 日清食品ホールディングス(東京)でデザイナーとして働く社員の大熊仁さん(23)は、この半年間での変化を振り返る。昨年12月から、睡眠時間や眠りの深さを測定する腕時計型センサーを24時間装着。6時間ほどだった睡眠時間を7時間半に増やした。シャワーだけでなく湯船につかるなど、生活習慣を見直した結果、眠りの質も向上。起きると頭がスッキリして体も軽くなったという。「よく寝たほうが仕事の能率が上がる」と実感している。

 大熊さんが参加したのは、社員が睡眠時間の目標を達成したら、国内外の子どもたちの支援活動に同社が寄付する試み。参加は任意で、測定に基づく助言なども行わない。始めてから4か月後には「仕事の効率が高まった」と感じる参加者が半数を超えた。

「睡眠で休養取れていない」30代男性が最多28%

 睡眠への関心が高まっている背景について、北里大学教授(産業精神保健学)の田中克俊さんは「多くの企業が、生産性向上の観点から、良い睡眠が与える影響に着目するようになった」と解説する。

 「睡眠負債」という言葉も最近、話題となった。米国の専門家が提唱した考え方で、日々の睡眠不足を借金にたとえ、たまると解消が難しくなることを指す。ただ、田中さんによると、米国では「睡眠不足が集中力低下を招き、社会に大きな損失を与える」という認識は1980年代からあったという。「職場で寝不足自慢をするような日本の風潮も、ようやく変わってきた」

 ただ、厚生労働省が発表した2016年の国民健康・栄養調査によると、「睡眠で休養が十分取れていない」という人は全体の20%。年代や性別で分けてみると、30代男性では28%を占めた。

「睡眠6時間以下で高リスク」

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西川産業の速水さんが腰に装着したセンサー。後方のパソコンでデータを見ながら助言を受けられる(東京都内で)

 眠りの質向上を求める動きは様々に広がっている。寝具メーカー西川産業(東京)の店舗の来店者は、これまで女性が中心だったが、20~30代の男性が相談に訪れる姿も目立ってきた。昨年には需要に応えて「ねむりの相談所」というコーナーを開設。センサーで睡眠データを計測し、計測結果を基に同社の「スリープマスター」が助言する。有名スポーツ選手を広告に起用した、高機能の新型マットレスの売れ行きも好調だという。スリープマスターの速水美智子さんは「睡眠を翌日の競技への準備と捉え、質にこだわるスポーツ選手は多い。同様の考え方が働く人にも広がっているようです」と話す。

 仕事の能率を高めるにはどれだけの睡眠が必要なのか。田中さんは「個人差はあるが、日々の睡眠時間が6時間以下になると、精神衛生上のリスクが高まります」と指摘。「仕事の能率を考える以前に、ぐっすり眠り、しっかり食べるという原点に立ち返り、人間としての健康を第一に考えましょう。元気な生活あってこそ、仕事の意欲や創造性が生まれるのです」

質の良い睡眠をとるポイント

・夕方以降はコーヒーなどカフェインを含んだ飲料は避ける。アルコールもほどほどに

・明るい居間から暗い寝室に移ってすぐ寝るのではなく、寝室で少し時間を過ごす。眠りに向けて体が準備する

・夏の室温は25度、冬は22度に設定。湿度は50%に保つと快適に眠れるが、エアコンの風を体に直接当てない

・「これから寝る」というタイミングでパジャマに着替えるなど、決まり事を習慣化する

(田中さん、速水さんの話をもとに作成)

睡眠時間短い日本…平均7時間22分

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 日本は国際的にみても睡眠時間が短いとされる。

 経済協力開発機構(OECD)が今年発表した調査によると、日本人の1日の平均睡眠時間は7時間22分で、韓国の7時間41分、メキシコの7時間59分を下回り、調査対象となった31か国中で最短だった。最も睡眠時間が長かったのは、南アフリカ共和国で9時間13分。日本より約2時間も長い。

 一方、同じ調査で、休日も含めた1日の平均労働時間をみると、日本人は4時間42分と、31か国中で最も長い。最も短いギリシャの2時間の倍以上だった。

 「労働時間が長ければ、睡眠時間を削って調整しなければならない。日本人はこれまでそうやって長時間労働に従事してきた」と、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也さんは指摘する。西欧など多くの国では、所定労働時間が厳正に定められ、それを守るのが当然の権利という認識が浸透していることも大きいとみられる。

 同じ調査で飲食に費やす平均時間をみると、日本人は1時間33分。フランスの2時間13分、ギリシャの2時間11分、イタリアの2時間7分など、西欧の長さが目を引く。

 上野さんは「西欧諸国には、ぐっすり眠ったり、食事を楽しんだりして、ゆったりと生活を楽しむことができる社会的、文化的な背景もある。日本でも働き方改革が動きだしたのをきっかけに、仕事中心から、ワーク・ライフ・バランスを重視した生活へと、時間配分が変わっていくことが期待される」と話す。

「睡眠こそが明日への活力」…取材を終えて

 今から30年ほど前のバブル期に流行した「24時間戦えますか」と歌うCMソングを、取材を進める中で、何度か思い出した。眠る時間を削ってでも働き続け、日本経済を回していた人たちが大勢いた時代の話だが、実は睡眠こそが明日への活力につながっていたとは。眠っている間は意識がないので、つい「無駄な時間」と思っていないだろうか。自身も顧みたい。

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