文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

医療・健康・介護のコラム

1人目よりも孤独…2人目不妊

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

わかっているから、聞かないで!

 

 「2人目」が授からないときの苦悩は、1人目のときとは、また違います。

 「妊活(にんかつ)」という言葉が普通に聞かれるようになって、子どものいない人に面と向かって「お子さんはまだ?」「子どもは作らないの?」と聞く人は減ってきました。「もしかしたら、この人は不妊?」という視点が備わってきたからでしょう。

 でも、この配慮は、残念ながら2人目の場合にはありません。子どもがいる人を「不妊かもしれない」とは思わないからです。実際のところは、5・5組に1組は不妊治療で1人目を授かるのですが、2人目がいないのは、「まだつくらないから」と解釈され、何の悪気も遠慮もなく、こうたたみかけられます。

 「きょうだいは、つくらないの?」
 「一人っ子はわがままに育っちゃうわよ」
 「あなたも年なのだから、急がないと…」

 もちろん、言う側は良かれと思って言ってくれるわけです。でも、それは言われる本人が一番わかっていること。どうにかしたいけれど「できない」。気持ちは焦るばかりです。

1人目よりも孤立する2人目不妊

 2人目不妊の人には、相談相手がいません。

 不妊に詳しくない人に「2人目のために不妊治療をしている」と言えば、「じゃあ上の子も不妊治療で? おカネ、どれぐらいかかったの?」などと見当違いなところを突っ込まれます。かといって、一緒に不妊治療を頑張っていた友人たちだと「1人いるなら十分じゃない」と思われかねないので、そこでも口をつぐみます。安心して相談できるところを見つけるのも一苦労なのです。

 2人目不妊は、専門クリニックにも通いづらくなります。

 急な通院が何度も必要になる不妊治療で、子どもを預けてでかけて行くというのは現実的ではありません。でも、待合室では小さな子どもが羨望といらだちの的になります。大声を出したりぐずったりすれば、これ見よがしに、大きなため息がもれることも…。

 保育施設やキッズルームのあるクリニックはほとんどなく、結局、子どもと一緒に廊下やビルの外などで順番を待ったりするのです。「自分だって、1人目のために通院中だった頃は、小さな子を連れてくる人を無神経だなと思っていましたから、仕方ないです」とYさんは言います。

 私も2人目不妊の悩みの深さを本当の意味で知ったのは、Fineの活動を始め、たくさんの人の話を聞いてからです。

 そもそも、不妊の悩みを話せる人もまだ少ないうえ、2人目不妊となるとさらに少数派になります。同じ立場の仲間を見つけるのは難しく、孤立します。これも、まぎれもなく、不妊を取り巻く課題の一つなのです。(松本亜樹子 特定非営利活動法人Fine=ファイン=代表)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

meet-baby_title2-200-200

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fineファウンダー・理事/国際コーチング連盟マスター認定コーチ

松本亜樹子(まつもと あきこ)

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

野曽原 誉枝(のそはら・やすえ)
NPO法人Fine理事長

 福島県郡山市出身。NECに管理職として勤務しながら6年の不妊治療を経て男児を出産。2013年からNPO法人Fineに参画。14年9月に同法人理事、22年9月に理事長に就任。自らの不妊治療と仕事の両立の実体験をもとに、企業の従業員向け講演や、自治体向けの啓発活動、プレコンセプションケア推進に力を入れている。自身は、法人の事業に従事しながら、産後ドゥーラとして産後ケア活動をしている。

いつか赤ちゃんに会いたいあなたへの一覧を見る

最新記事