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うつ病、頭に磁気刺激治療…電流で神経機能回復

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うつ病、頭に磁気刺激治療…電流で神経機能回復
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 頭部に磁気の刺激を加え、うつの症状を改善する新しい治療が国内でも導入される。東京都内の男性会社員(59)は、薬を飲んでも意欲の減退や体のだるさなどが続いていたが、この治療を受けたところ、体調が回復した。現在、復職に向けた訓練に取り組んでいる。(原隆也)

薬が効かない患者向け

 この男性は、気分が落ち込むうつ状態と、調子のよいそう状態を繰り返す双極性障害(そううつ病)を患う。15年ほど前から症状が出始め、寝付きが悪くなっていたが、当初は診断がつかなかった。しばらくして、うつ病と診断され、抗うつ薬を飲み始めたが、良くなったり悪くなったりを繰り返した。

 6年前に転院したメディカルケア虎ノ門(東京都港区)でそううつ病とわかった。しかし、状態は変わらず、休職しては復職し、また休職という生活が続いた。

 昨年8月、院長の五十嵐良雄さんからTMS治療の臨床研究に参加することを提案された。TMS治療は、頭部にあてると磁場が発生し、それに伴って脳に渦状の電流が走る医療機器を使い、神経細胞を刺激するというものだ。

 男性は12月から治療を始め、1日20分間の治療を今年4月までに計30回受けた。最初は頭をたたかれるような衝撃とこめかみや歯が震える不快感に驚いた。その後は慣れて刺激の強さも上げ、20回続けたところで体調の改善を実感した。

 男性は「磁気をあてることで何か副作用が出るのではないかと不安もあったが、やってよかった」と振り返る。

 うつ状態のとき、患者の脳内ではセロトニンなどの神経伝達物質の働きが低下していたり、量が異常に減ったりしている。TMS治療の臨床研究をしてきた慈恵医大准教授の 鬼頭きとう 伸輔さん(精神科)は、効果の仕組みについて、電流の刺激が神経伝達物質の働きを回復させるとみている。

 TMS治療は2008年、薬の効果が得られないうつ病患者を対象に米国で承認され、欧州やアジアにも広がった。そううつ病に対してはまだ研究段階だが、薬が効かないうつ病の患者向けには、日本でも昨年9月、承認された。保険適用となる見込みだ。

精神神経学会、適正使用指針を作成

 これを受けて、日本精神神経学会は今年4月、TMS治療の適正使用指針を作成した。治療の目安は1日約40分を週5回のペースで計20~30回実施するとした。

 ただし、磁気で誤作動の恐れがある心臓のペースメーカーなど体内埋め込み型の装置を装着している患者は対象外。米国でけいれん発作を起こした例があることから、てんかんやけいれん発作の経験がある患者は、脳神経外科や神経内科などの専門医と相談して実施を判断するよう求めている。

 鬼頭さんは「連日治療に通わなければならない大変さはあるが、比較的副作用が少なく、効果も期待できる」と話す。

 今のところ、国内でこの治療が承認されたのはうつ病に限られているが、五十嵐さんは「うつ病での実績が重なり、治療法として根付けば、そううつ病へも適応が拡大されるのではないか」と話している。

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