文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

コラム

小児がんとの闘い(3) 抗がん剤の毒性で一度止まった心臓 治療の継続はあまりにも残酷だと…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 千里ちゃん(仮名・3歳)のおなかの中には、手術で摘出できないくらい大きな小児がんがありました。その小児がんは大変珍しいタイプで、血圧を上昇させるホルモンを放出していました。したがって、千里ちゃんは3歳であるにもかかわらず高血圧の状態にあり、そのために心臓の働きが低下し、心不全になっていました。

完治すると思った千里ちゃんが「呼吸していない」

 私たちは、小児科の循環器グループと連携しながら、千里ちゃんに抗がん剤治療を開始しました。

 抗がん剤は効果を発揮し、X線CT(コンピューター断層撮影)を撮ってみると、腫瘍は縮小していました。腫瘍が十分に小さくなったところで私たちは手術をおこない、腫瘍をすべて摘出しました。あとは、追加の抗がん剤を投与すれば、千里ちゃんが完治する可能性は高いと言えます。手術が終わっても、小児循環器科の先生に、心臓の機能のチェックは継続してもらっていました。

【名畑文巨のまなざし】
ポジティブエナジーズ(その4) 世界をめぐり撮影したダウン症の子どもたちは、みなポジティブなエネルギーにあふれていました。南アフリカの4歳の男の子。庭にあるトランポリンで遊んでもらったら、もうずっと飛び跳ね続けていました。運動するのが大好きなんでしょうね。表情も本当に生き生きとしているんです。南アフリカ共和国プレトリア市にて

 ある日の回診のことです。夕方でした。お母さんが千里ちゃんを抱っこしています。部屋は薄暗く、千里ちゃんの表情がよく見えません。そのとき、私は「あ!」と声を上げました。千里ちゃんは呼吸をしていないのです。

 私は慌てて千里ちゃんをベッドに寝かせてもらいました。心臓も止まっています。医師と看護師が千里ちゃんの周囲に殺到して、心臓マッサージを開始し、気管内挿管をして人工呼吸をしました。心臓を動かす薬も次々と注射しました。

脳にダメージ残り、寝たきりに

 心不全を起こしていた千里ちゃんの心臓が、ついに、投与した抗がん剤の毒性に耐えきれなくなってしまったのです。懸命の処置によって心臓の拍動が弱いながらも再開したのをとらえ、私たちは千里ちゃんをICU(集中治療室)に運びました。

 およそ1か月がたち、千里ちゃんはICUから小児外科の病室に帰ってきました。自分の力で呼吸はできますが、手足を動かしたり、言葉を出したりすることはできなくなっていました。心臓が止まっていた間に、脳に深刻なダメージが加わったからです。千里ちゃんは一生、寝たきりになってしまったのです。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

inochihakagayaku200

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたち

 生まれてくる子どもに重い障害があるとわかったとき、家族はどう向き合えばいいのか。大人たちの選択が、子どもの生きる力を支えてくれないことも、現実にはある。命の尊厳に対し、他者が線を引くことは許されるのだろうか? 小児医療の現場でその答えを探し続ける医師と、障害のある子どもたちに寄り添ってきた写真家が、小さな命の重さと輝きを伝えます。

matsunaga_face-120

松永正訓(まつなが・ただし)

1961年、東京都生まれ。87年、千葉大学医学部を卒業、小児外科医になる。99年に千葉大小児外科講師に就き、日本小児肝がんスタディーグループのスタディーコーディネーターも務めた。国際小児がん学会のBest Poster Prizeなど受賞歴多数。2006年より、「 松永クリニック小児科・小児外科 」院長。

『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』にて13年、第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。2018年9月、『発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年』(中央公論新社)を出版。

ブログは http://wallaby-clinic.asablo.jp/blog/

名畑文巨(なばた・ふみお)

1958年、大阪府生まれ。外資系子どもポートレートスタジオなどで、長年にわたり子ども撮影に携わる。その後、作家活動に入り、2009年、金魚すくいと子どもをテーマにした作品「バトル・オブ・ナツヤスミ」でAPAアワード文部科学大臣賞受賞。近年は障害のある子どもの撮影を手がける。世界の障害児を取材する「 世界の障害のある子どもたちの写真展 」プロジェクトを開始し、18年5月にロンドンにて写真展を開催。大阪府池田市在住。

ホームページは http://www.fumionabata.com/index.html

名畑文巨ロンドン展報告

いのちは輝く~障害・病気と生きる子どもたちの一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

子の余命宣告について

18ママ

18トリソミーの子の母です。 現在10カ月になった我が子ですがことあるごとに医師との面談で病状の説明と共にいざとなったら延命治療をどうするかと問...

18トリソミーの子の母です。
現在10カ月になった我が子ですがことあるごとに医師との面談で病状の説明と共にいざとなったら延命治療をどうするかと問われます。
それはお医者さんの立場としては当然のお役目なのだとは理解していますが、患者の家族としては、この病なのだから諦めてくれと暗に言われているようで本当に辛いです。
希望を持たせるような言葉はありません。
そして今は安定しているから退院しましょうと切り出されますが不安と恐怖で寝れません。もう少し何とかならないものでしょうか。在宅介護を続けることにも支障が出てきています。これは私自身が乗り越えるしかないのでしょうか。他の方々はどう乗り越えていらっしゃるのか知りたいです。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事