安心の設計
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在宅サービス いくらかかる?…介護 自己負担は原則1割
訪問介護やデイサービスなど、高齢期の自宅での生活を支える在宅介護サービス。老後の生活設計の観点からも、介護保険の仕組みや毎月の大まかな費用などを押さえておきたい。
都内の自宅で夫と暮らす要介護2の80歳代女性は、1日おきに週3回、デイサービスに通う。その日は迎えの車が来るまで朝食や身支度で忙しく、直前に短時間、ホームヘルパーによる訪問介護も受ける。腰に痛みがあるため、トイレ内の手すりや、外出用の歩行器もレンタル中だ。いずれも介護保険を利用している。
担当ケアマネジャーの池田美幸さんは「デイサービスは、決まった時間に出かけて、様々な活動をすることで、生活する力の維持が期待でき、家族の負担軽減にもつながる。日常生活を支える訪問介護や福祉用具レンタルとの組み合わせは、介護保険を利用する際のよくある事例だ」と話す。
この女性の場合、6月の費用は計約3万円。内訳は、介護保険の自己負担分が約2万円、デイサービスの昼食代が約1万円だ。
介護保険では要介護度に応じ、1か月の支給限度=別表=が定められている。地域や利用サービスにより幅が生じるため、金額は目安だが、要介護度が高くなるほど介護サービスの必要性が高まり、支給限度額が高くなる。限度内の利用なら原則、自己負担は1割。年金収入が多い人などは2割負担で、今年8月以降、所得が現役並みの一部の人は3割に引き上げられる。利用者の約90%が1割負担で、この女性の場合も、6月に約20万円分のサービスを利用し、その1割を支払う。
デイサービスの料金は要介護度や時間、入浴の有無に加え、事業所の規模や人員配置などによっても変わる。送迎は料金内に含まれる一方、昼食代は全額自費。池田さんは「都内のデイサービスは、1割負担の場合、1回1000~1500円で利用できる。昼食代なども含めると2000円前後になる」と説明する。
訪問介護の料金は利用時間だけでなく、食事や入浴、排せつなどの「身体介護」か、家事支援など「生活援助」かによっても変わる。30分の身体介護で自己負担は1回約300円だ。
介護保険では、1か月の支給限度を超えた分は全額自費となる。例えば、都内に住む要介護4の男性の例を見てみよう。
男性は排せつの介助が必要で、1時間ずつ毎日2回の訪問介護(身体介護)を利用するほか、週2回のデイサービス、週1回の訪問入浴などで、6月の介護サービス費用は約41万5000円。だが、介護保険の支給限度は約35万円。約35万円までの部分は、その1割の負担ですむが、限度を超えた約6万5000円の部分は全額自費になり、デイサービスの昼食代を含め支払いは合計10万円を超える。
支給限度を超える人は利用者全体のうち2%程度で大多数の人は限度内に収まっているが、自宅での生活に必要なサービスを組み合わせた結果、自費での負担が膨らむケースもあり得ることに留意したい。
[アドバイザー]池田美幸さん
主任ケアマネジャー、認定ケアマネジャー、歯科衛生士。2005年、東京海上日動ベターライフサービス入社。現在、「みずたま介護ステーション」の都内の事業所で約30人のケアプランづくりを担当するほか、社内の新任ケアマネジャー育成の責任者も務めている。
生活力維持が節約に
介護保険の支給限度の範囲内なら、自己負担は原則1割。サービスを低額で利用できるため、限度ぎりぎりまで活用した方が得をするように思える。だが、池田さんは「かえって介護費用が高くつくことにもなりかねない」と注意を促す。
在宅介護サービスを受ける人にとって、できるだけ長く、自分らしい暮らしを続けることが理想だ。食事作りや買い物など、自分でできていることまで便利なサービスに頼り切りになると、自立した生活から遠ざかってしまう懸念もある。「家事支援のサービスを利用する場合でも、ヘルパーさんと一緒に台所に立ったり、スーパーに行ったりすることを積み重ねれば、生活するための力の維持や、状態改善も期待できる。中期的に介護にかかるお金の総額を減らすことにもつながる」と池田さんは話す。
大きなけがや病気で退院した直後など、サービスの利用が不可欠な場合もあるが、落ち着いたら、頻度や内容などケアプランを見直すことも大切だという。
(滝沢康弘)
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