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高齢者 食を楽しむ(下)おいしい介護食 食欲増進

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高齢者 食を楽しむ(下)おいしい介護食 食欲増進

商品を試食する三好さん(左)。介護中の食事に悩む知人に紹介しているという(東京都墨田区のライフバランス薬局で)

 高齢になってかむ力やのみ込む力が弱り、ミキサーを使うなどした軟らかい食事をとるよう指導される人は多い。家庭では調理に手間がかかるうえ、使う食材も限られ負担が大きくなりがちだが、固さや栄養量を調節した介護食をうまく取り入れると、食べる楽しみを損なわずに負担を減らすことができる。

 たくあん、しば漬け、豚の角煮、ぶり大根、おはぎ――。東京都墨田区のライフバランス薬局には、様々な介護食が並ぶ。いずれも、歯茎や舌で少し力を加えるだけでとろける特殊な調理法で、味や香りを落とさないよう工夫されている。少量で効率良く栄養が取れる栄養補給食なども合わせると、種類は1000以上もある。価格は1品200円程度が中心。高くても500円前後だ。

 近くに住む三好由美子さん(64)は、父の毅さん(95)が1月に老衰で亡くなるまで、同薬局の薬剤師 小縣おがた 悦子さんのアドバイスを受け、介護食を利用した。

 毅さんは3年前、肺炎での入院を機に、かむ力が弱ってしまった。どろどろした食事には「食欲がわかない」と手をつけず、痩せていった。

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介護食シリーズ「あいーと」の「筑前煮」(上)。見た目は普通食そっくりだが、同じ素材をミキサーにかけたもの(下)と軟らかさは変わらないという

 困った由美子さんは、近所の同薬局に相談。様々なメーカーの商品を試食しながら、毅さんの好みに合いそうな品を試した。調理方法は電子レンジで温めるだけのものがほとんどで、由美子さんは「普通の皿に盛り付ければ、見分けがつかないものも多い」と驚いたという。

 「メインのおかずだけでも見栄えを良くする」「家族とメニューをそろえる」などと提案され、毅さんは亡くなる10日前まで、加工された漬物やグラタンなどを食べた。体力が回復し、時には普通の食事やおやつも楽しむことができた。

 介護用に加工した野菜や肉などの食材も販売されている。高齢者らの自宅を訪問する大阪府吹田市の管理栄養士、水島美保さんは、加工されたシイタケやこんにゃく、豚肉を使った豚汁、トンカツなどのレシピを、家族やホームヘルパーらに紹介する。「家庭の味に近いので飽きもこない。どろどろの食事を出し続けると、多くの人が食べるのをやめてしまう」という。水島さんとともに利用者宅を訪ねるケアマネジャーの内海りえさんは「最新の介護食や調理法は、介護スタッフでも知らないことが多い」と指摘する。

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 介護施設でも、介護食に力を入れる動きがある。介護老人保健施設「茶山のさと」(京都市)は、栄養士と調理師らが協力して、一人一人のかむ力やのみ込む力に合わせて食事を細かく調整。介護用食材も使いながら、見た目や盛りつけも工夫し、安全に、楽しく食事がとれるようにしている。

 同施設の管理栄養士、床井多恵さんは「栄養状態が良くなれば、風邪をひきにくくなったり、皮膚のトラブルが治りやすくなったりする。自宅に戻る自信もつく」と話す。

 市場調査会社の富士経済によると、介護食は大半が施設向けに出荷され、在宅向けは全体の1割弱にとどまるが、今後は家庭用の需要が高まると見込まれている。店頭の品ぞろえが少ないため、各メーカーに問い合わせたり、近くの薬局で相談したりすると手に入れやすい。

 東京大学の小川純人准教授(老年医学)は、「薬や点滴で必要な栄養が取れればいい、という考え方もあるだろうが、食事を楽しめなくなると、他のことへの意欲も失いがちで、体全体が弱ってしまう。適切な食事のとり方を指導できる医師や栄養士が不可欠」と話している。

  <介護食>  ほとんどかまずにのみ込める流動食、舌や歯茎でつぶせる「やわらか食」、少量で栄養価が高い栄養補給食、むせないようとろみをつけるための調整食品などがある。見た目や味を普通の食事そっくりに加工する技術が進んでいる。

 この連載は、生活部・本田麻由美、社会保障部・大広悠子が担当しました。

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