文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

漫画家 柴門ふみさん

一病息災

[漫画家 柴門ふみさん]乳がん(2)「死ぬんだ」心揺れる

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
[漫画家 柴門ふみさん]乳がん(2)「死ぬんだ」心揺れる

 「去年映っていなかったものが映っていますね」

 2010年の検診で、医師の言葉にはっとした。マンモグラフィー(乳房エックス線撮影)では、それまでの検診で影が映っていた右胸に変化はなかった。ただ、左胸に白い点がぽつんとあった。「机に胸をぶつけて内出血したりして映ることもある」と医師に言われたが、嫌な予感がした。

 細胞を採取して異常を調べる「細胞診」をした。検査結果が出るまでの2週間は、とても長く感じた。当時、連載を抱えており、漫画を描いている時は没入できた。でも、朝起きた時や仕事が終わって過ごす夜は、「大丈夫、大丈夫」という思いと、「もう死ぬんだ」という悲観する気持ちが交互にわき上がり、心が揺れた。漫画家という職業柄か、想像はとめどなく広がった。

 検査結果がわかる日は漫画の締め切りの日だった。病院に行けず電話した。医師の息をのむ音がして「がん細胞が見つかりました」。手術を勧められた。落胆はしたが、3年前、乳がんについて“予習”していた。「やっぱり」とさほど驚きはなかった。

 手術までの間、気持ちを落ち着かせるため、山田風太郎の「人間臨終図巻」を手に取った。偉人や著名人の最期が年齢ごとに収録されている。「どんな英雄も、天才も、皆死んでいる。そんなもんだろう」。そう思うことが出来た。

  漫画家 柴門ふみさん(61)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

sokusai_117

 
 

一病息災の一覧を見る

漫画家 柴門ふみさん

最新記事