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医療部発

医療・健康・介護のコラム

麻酔事故で逝った小さな命 峻くんが遺したもの

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医療機関の改善につながれば、天国にいる息子も報われる

お兄ちゃんの純生くんを真ん中に、「川の字」になってご機嫌の3人。右が赤ちゃんの峻くん(遺族提供)

お兄ちゃんの純生くんを真ん中に、「川の字」になってご機嫌の3人。右が赤ちゃんの峻くん(遺族提供)

 峻くんは、体は丈夫でなかったけれど、家族と普通の生活を送っていました。三つ上の兄・純生じゅんきくんは双子の弟たちが大好きで、いつも2人と一緒に「川の字」になって寝ていました。航くんは、小さくても峻くんを守ってくれる存在。三輪車に2人乗りしようとしてうまくいかなかったときは、言われなくても自分が降りて峻くんに譲り、やさしく背中を支えてあげました。

 家族みんなで大切にしていた峻くんが医療事故で亡くなり、両親は病院との話し合いを続けていました。しかし、病院側は問題ないという立場をとっていて、納得いく対応はなかったといいます。それでは冒頭のような願いはかないません。悩んだ末に、客観的な判断を仰ぎたいと考えた両親は、14年になって、やむにやまれず民事訴訟に踏み切ったのです。「このことを多くの人たちに知ってもらいたい」。そう考えた両親は判決の後、記者会見に臨み、父親の仁さんはこんな思いを語りました。

 「事故についても正直に公開することが、責任ある医療機関のあるべき姿だと考えています。少なくとも、われわれの4か月前の事故が広く知られ、病院が緊張感を持って過ちを改善していたら、息子は命を落とすことはなかったと思っています。今回の判決が、今後の医療機関のあり方を少しでも改善することにつながれば、天国にいる息子も報われると思っています」

事故の教訓 未来の子どもたちのために

とても仲良しだった双子の峻くん(左)と航くん(遺族提供)

とても仲良しだった双子の峻くん(左)と航くん(遺族提供)

 峻くんと双子の航くんはいま、中学2年生。それほど長きにわたる家族の葛藤を支えたのは、こういう思いだったのです。本当の願いは、峻くんを帰してもらうことでしょう。しかし、それはだれにもできません。医療事故を検証して後の教訓にすること。それは亡くなった患者やその家族だけでなく、この社会にとって大切なこと。小さな峻くんがのこしたものは、未来の子どもたちを救うことにつながるはずです。

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高梨 ゆき子(たかなし・ゆきこ)
読売新聞医療部記者。
社会部で遊軍・調査報道班などを経て厚生労働省キャップを務めた後、医療部に移り、医療政策や医療安全、医薬品、がん治療、臓器移植などの取材を続ける。群馬大病院の腹腔鏡手術をめぐる一連のスクープにより、2015年度新聞協会賞を受賞。著書に「大学病院の奈落」(講談社)がある。

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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1件 のコメント

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麻酔科医への処分は?

あっち

同じ医療事故を2件立て続け起こした小児科医に処分は下ったのでしょうか。 いまでも何食わぬ顔で医業を続けているとしたら怖すぎます。

同じ医療事故を2件立て続け起こした小児科医に処分は下ったのでしょうか。
いまでも何食わぬ顔で医業を続けているとしたら怖すぎます。

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