認知症介護あるある~岡崎家の場合~
医療・健康・介護のコラム
「オレは認知症なのか?」偶然知った病名に衝撃
重い空気を笑い飛ばした母さん
その後、新しい介護サービスを受けることになったときに、ケアマネジャーや関係するスタッフが我が家に来て打ち合わせをしていました。そこには母さん、私、父さんも同席していました。
机の上に広がっている書類の一枚を父さんが、ふと手に取りました。なんと、それは父さんのこれまでの病歴などが書かれている資料。それを読んだ父さんが「オレは認知症なのか?」と、衝撃的な質問をみんなに投げかけてきました。
なんと答えたらいいかわからず、場の雰囲気は一瞬にして凍り付きました。が、一人だけ笑っている人がいます。母さんです。そして「あら、知らなかったの!」とすこぶる明るく答えました。みんなが「えー、それ言っちゃう?」と心の中で叫んでいると、父さんは「そうなのか……」と少し落ち込んでいました。
母さんは、あの重い空気と父さんの気持ちを思い、心の中では苦悩しつつも、努めて明るく笑い飛ばすように言ったのでしょう。さらに父さんは、認知症ゆえ、数分後にはこのやりとり自体を忘れたようで、このときばかりは「認知症で良かった」と不謹慎ながらもホッとしたのです。
思いは複雑…尋ねてみたい今の気持ち
こんなふうに認知症になった本人から、それを不安に思う気持ちを聞いたり、自分の病気について尋ねられたりすることも、「認知症介護あるある」なのかもしれません。そのとき、家族としてどうしたらいいのでしょう。全てのケースでベストな回答かはわかりませんが、母さんのように明るく笑い飛ばすのが、岡崎家のベストなのかもしれません。
現在の父さんは、新聞を読みまくっていたころより認知症の症状が進み、新聞よりも、おいしそうな食べ物がたくさん載っているスーパーの折り込みチラシを眺めていることが多くなりました。もう新聞を読まなくなったということは、あのころのような不安な気持ちは、病状の進行とともに消えているのでしょうか。
そう考えると、なんだか複雑な気持ちになります。母さんを見習って、今の父さんの心の声を明るくサラッと聞いてみようかな……なんて思うのも、私の「認知症介護あるある」なのです。(岡崎杏里 ライター)
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