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ヤングケアラー(上)介護、世話に追われる若者 

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祖父母の病気 大学中退も考えて…

ヤングケアラー(上)介護、世話に追われる若者 

「自分が介護しなくてはいけないと思いつめた部分もある」と振り返るA子さん(大阪府内で)

 家族の介護や世話をする若者の存在が注目されている。ヤングケアラーとも呼ばれる。孤立しがちで進学や就職を断念する場合もある。彼らが抱える悩みは何か。どんな社会的サポートが必要なのか。2回にわたって考える。

 「大学をやめようかな」――。大阪府の大学4年生のA子さん(23)は1年半前、大学を中退することを考えた。当時、認知症の祖母(84)の介護と、心臓の病気で入院中の祖父(83)の看護に追われていた。

 「おじいちゃんにお金を取られた」と言ったり、夜中に朝食の準備を始めたり……。祖母からは目が離せなかった。転倒して入院した時には、病院側の求めで身体拘束の同意書にサインもした。家で祖母の世話をしながら、3か月入院した祖父を病院に見舞った。

 授業に出ないで祖父母の世話に専念する日を作った。授業がある日でも、祖母がデイサービスから帰る時間に間に合うよう帰った。いつも祖父母の世話のことで頭がいっぱい。大学の授業の内容も頭に入らなかった。

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 A子さんは幼い頃に両親が離婚し、母親と祖父母の4人暮らしだった。母親は週6日の仕事で生計を支えていた。そんな母親の代わりに面倒をみてくれたのが、祖父母だった。「恩返ししたい」。そんな気持ちもあって、積極的に祖父母の世話を引き受けた。

 ただ、両立の悩みを明かせる仲間は周囲に皆無。「介護のことはわかってもらえない」。友人と話す気力もなかった。

 「あなたが大学をやめても、おばあちゃんは喜ばないんじゃないかな」。祖母の介護サービスの利用計画を立てるケアマネジャーからこう言われ、中退することは思いとどまった。翌年、祖母は認知症の人が暮らす地域のグループホームへ入所した。

 A子さんは週1回、祖母に会いに行っている。「笑顔をみるとホッとする。でも、『家で暮らしたい』という祖母の願いをかなえられなかったという思いもある」と複雑な心境を語る。

  感情を押し殺す

 病気の家族の世話をしてきた人もいる。

 父子家庭で育った首都圏のB子さん(27)は小学生の頃から、父親と妹の世話をしてきた。家事だけでなく、時には通院の付き添いや薬の管理をすることもあった。

 B子さんが小学生の頃、父親が仕事のストレスでアルコール依存症になり、精神疾患も発症した。妹は小、中学校を休みがちだった。精神疾患を患っていた。「家のことを誰にも話せなかった。感情を押し殺して10代を過ごした」という。

 救いだったのが、中高時代の学習塾の先生の存在だ。塾にいる間だけが、子どもでいられる時間だった。その後、大学で心理学を学び、就職して実家を離れるなどし、少しずつ、自分の時間を作ることができるようになってきた。

 B子さんは「ずっと何のために生きているんだろうと思っていた。『自分の人生を生きて良い』と言ってくれる人がいてよかった」と話す。

  <ヤングケアラー>  日本では明確な定義はない。介護者の支援が進む英国では、慢性的な病気や障害などを抱える家族らの世話や介護、精神的なサポート、家事などを行う子どもたちのこととされ、1980年代末から注目されている。

ケア内容、負担など実態不明

 総務省の「就業構造基本調査」(2012年)によると、介護をしている15~29歳の若者は約17万7600人に上る。ただ、調査時期も古く、14歳以下の小中学生は対象外。全国の人数は把握されていない。ケアの内容や負担の重さなども分からないままだ。

 介護や看護をしている時期が本人の成長期や進路選択する時期と重なると、進学やその後の人生に与える影響は大きいとされている。

 核家族化などで家族の支え合う力が弱くなるなか、介護や家族の世話をする若者や子どもの問題は今後、深刻になる恐れもある。早急な実態把握が求められている。

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