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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

変わる視覚障害の認定基準…不自由な生活を送る人たちの「光」になるか

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 視覚障害について身体障害者手帳の交付を決める認定基準が見直され、新しい基準がこの7月から適用されます。

「両眼の視力の和」から「良い方の視力」へ変更

変わる視覚障害の認定基準…不自由な生活を送る人たちの「光」になるか

 新基準では、視力障害の判定で「両眼の視力の和」ではなく、「良い方の視力」で評価する方法に改められました。

 たとえば、左右とも視力が0.04の人は、従来の方法では合計0.08になるので、両眼で見ればあたかも0.08の視力が出るような気がします。しかし、実際には両眼で見ても、0.04以上の視力は出ないのです。

 私たちは、通常は利き目、または「よく見える」と感じる目でものを見ているので、この計算の仕方は学問的にも実践的にも不合理であると、眼科医療の世界で指摘されてきました。そのため、今回は妥当な見直しだと考えられます。

 この見直しによって、従来の計算法で認定された等級が下がってしまわないような配慮もされています。不利益は生じないと思われます。

「実践視力」に近い視力測定が望ましいが…

 さて、厚生労働省の検討会では、視力の測り方についての意見が出ました。時間をかけて視力表を見るか、制限時間内で測定するかについてです。

 時間をかけて視力表をみれば、よい視力を得られる人がいます。とくに、視野の中心に問題がある方は、少しでも良好な感度が残っている部分を生かせば、時間はかかりますが、よい視力を測定できる可能性があります。ただ、そのような視力は、瞬時の判断が重要な日常生活で役立つとは言い難いでしょう。

 私は、日常生活に使われている「実践視力」に近い視力を測定することが、本人の不便さが反映される適切な方法であると考えます。ですが、新基準では視力を測る時の時間的な条件などについての言及はありませんでした。

「視野」測定の大幅見直し…自動視野計による基準追加

 視野については、比較的大幅な見直しがなされました。

 いままでは、基本的に2種類の光の強さと大きさを持つ「円形の視標」を動かしながら視野を測定する「ゴールドマン視野計」を使った検査結果で判定されていました。これを備えていない医療機関も多く、医療スタッフの経験や力量がないと信頼できる結果が得にくいという特徴があります。

 今回は、視標は動かず、その光の強度だけが変化する「自動視野計」による基準も加わりました。前者を備えていなくても、自動視野計のみで検査している医療機関もそれなりにあるからです。

 異なる検査方法でも、等級の判定に大きな差はないということは、ある程度、検証されています。しかし、患者の状態によっては、障害者手帳の認定基準を満たす数値が出た方の結果を医師が選択できる事態も考えられます。

 それゆえ、一方の視野検査法で認定基準を満たすどうか、ボーダーラインにいた視覚障害者にとっては「福音」になるかもしれません。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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