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自宅や職場で「腹膜透析」…生活に合わせて選ぶ透析治療

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自宅や職場で「腹膜透析」…生活に合わせて選ぶ透析治療
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 人工透析の選択肢の一つに、生活スタイルに合わせて、患者自身が自宅や職場で行う「腹膜透析」がある。重い腎臓病で4年前から腹膜透析を始めた、東京都の会社役員の男性(67)は「腹膜透析は生活の制約が少ないので、やりがいのある仕事を続けやすい」と喜ぶ。(安藤奈々)

よく知られている「血液透析」と比べると…

 腎臓の働きが低下し、腎不全になると、血液中の老廃物や余分な水分を取り除く人工透析が必要となる。人工透析では、医療機関で腕から血液を取り出し、機械を使って循環させる「血液透析」が知られている。

 一方、腹膜透析では、自分のおなかの中に透析液を入れ、腹膜の働きを利用して、血液中の老廃物を排出する。腹膜透析の優れた点は、週3回程度の通院が不可欠な血液透析と比べ、自宅や職場でできる利便性だ。患者自身はもちろん、介護が必要な場合などに家族が行うこともできる。

 専用の機器が自動で透析液を注入、排出する「APD」という方法は、就寝中に透析が済む。透析液の袋を自分で交換する「CAPD」では、1回30分の透析を日中3、4回に分けて行う。透析液を携行すれば、どこでも行える。通院はどちらも月1、2回だ。

 2014年に腎不全となった男性は、水産物の仕入れ・販売の仕事を続けたいと考え、日中、治療による制約を受けにくいAPDを選択した。2年前から週に1回、血液透析も併用するが、今も週5日勤務する。

 腹膜透析は治療期間に個人差がある。透析の効率が低下したり、腹膜が硬くなったりするため、継続できる期間は5~10年。途中で腹膜炎を起こすこともある。血液透析への切り替えがいずれ必要となる。

 男性は「腹膜透析のおかげで、大きく生活を変えずに済んだ。今の生活を70歳まで続けられたら」と話す。

 患者にとって、より使いやすい腹膜透析の機器も誕生した。医薬品・医療機器メーカー「バクスター」(東京)が5月に発売した製品は、インターネット経由で透析のデータを送信する機能を搭載する。

 聖路加国際病院(東京)の腎センター長の中山昌明さんは「医師が、自宅にいる患者さんの状態を把握し、必要に応じて透析液の量を調整する迅速な対応ができる」と期待する。

普及が進まない理由

 しかし、腹膜透析を利用する患者は、血液透析より圧倒的に少ない。日本透析医学会の調査によると、16年末の時点で、国内の透析患者約33万人のうち、腹膜透析を行う人は約9000人にとどまった。

 普及が進まないのは、腹膜透析に対応して、患者を指導できる病院が少ないことが一因だ。

 日本透析医学会理事長で埼玉医科大教授の中元秀友さんは「腹膜透析について、医師から患者への説明が十分にできていない」と指摘する。

 国は対策として、今年度の診療報酬改定で、透析治療の選択肢を患者に十分説明したり、腹膜透析の実績が一定の水準を上回ったりした時は、診療報酬を上乗せするようになった。

 中山さんは「患者さんがどういった生活を送りたいか。医師は患者さんの思いや考えを理解し、治療の選択肢を丁寧に説明することが大切」と話す。

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