いちばん未来のシニアのきもち
医療・健康・介護のコラム
「思い出」から生まれる私たちの明日
こんにちは、慶成会老年学研究所の宮本典子です。
高齢者は、超高齢社会のいちばん先をいく人たちです。共に生きやすい社会をつくることは、次の世代の未来をつくることになると思いませんか?
高齢者は、同じ思い出を繰り返し口にします。皆さんも、よく見聞きしているのではありませんか?
「おじいちゃん、また戦争の話でしょう? もう何回も聞いた!」
「おばあちゃん、食べ物がなかった頃の話なら、聞き飽きた!」
同じ話を何度も聞かされる家族にすれば、面倒になってそう言ってしまう――。そんな気持ちは、わからなくもありません。
しかし、記憶力が低下して同じ話を繰り返すことと、人生の大切なエピソードを繰り返し語ることでは、意味合いが違うのです。
年を重ねるごとに豊かになる思い出
人は、年を重ねることで、健康、仕事、大切な家族など、様々なものを手放していかなければなりません。しかし、どれほどの喪失体験に遭っても、失わずにいられるのが「思い出」です。いえ、むしろ思い出は、年を重ねるほどに豊かに増えていくのです。
生まれ育った故郷の美しい景色
一緒にいたずらをし手遊んだ幼なじみ
勉強をしたくても環境が許さなかった無念さ
食べ物のない戦後に苦労した子育て
高度成長期の日本を支えるべく懸命に働いた日々のこと
アメリカの精神科医ロバート・バトラーは、高齢者が自らの人生を振り返って思い出を語ることは、人生の意味を模索する自然な心の働きであり、こうした高齢者の昔語りを聞いて受け止めることが高齢者の心理的安定や自尊心の向上、人生に対する満足度の向上などにつながると考えました。そして、1963年に高齢者を対象とする心理療法として「回想法」を提唱しました。
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隣の市に引っ越して、老人会に入れて貰った。しかし、月1回の懇親会は、期待を裏切った。会長の挨拶、冷たいお弁当、余興?はビンゴ、最後はカラオケ、歌が始まるとおしゃべり、有志が三~四人歌って散会。ある時、私にカラオケを歌えといわれた。私は迷わず「ふるさと」を選び、おしゃべりしている会員に話しかけてた。「声は出ますか、私の声を超える大きな声を出してみませんか」。「♪大きな歌だよ」と一小節を歌う。きょとんとしている人に、「私と同じように声を出してください。♪大きな歌だよ」「大きな歌だよ」「今のは、小さな歌だよでしょ.もっと大きく.♪大きな歌だよ」「大きな歌だよ」「大きく聞こえました、さあ次、♪あの山の向こうから」「あの山の向こうから」「その調子、♪聞こえてくるだろう」・・・。「♪大きな空だよ、お日様が笑ってる、僕らを見つめる、大きな空だよ」。十分間の歌声は、皆さんを笑顔にした。そして、童謡唱歌を歌う会が、発足することになった.毎月第二火曜日、歌謡会と命名。
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