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いちばん未来のシニアのきもち

医療・健康・介護のコラム

「思い出」から生まれる私たちの明日

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家族も聞き手になれる「回想法」

 バトラーは、高齢者が過去を振り返る際、よい聞き手がいることが大切だと述べています。語る側の心に問題がある場合は、専門家の関与が必要です。でも、そうでなければ皆さんのような家族も、立派な聞き手になれるのです。

 その時は、以下の点に留意してください。

・繰り返し語られる内容でも、真しに耳を傾けましょう。
・話し手のペースを乱さないよう、呼吸を合わせるように聞きましょう。
・聞き手が自分の意見や価値観を押し付けたり、話し手の意見を否定したりしてはいけません。
・話したくなさそうな話題を無理に聞き出さないように。誰にでも、心にしまっておきたい事柄があるものです。
・家族だからこその難しさも意識しておきましょう。

――家族だから話せる内容も、家族だからこそ聞きたくない内容もあります。時にはカウンセラーなどの専門家に委ねましょう。

――親子だと話しにくい(聞きにくい)話でも、聞き手との関係がめいやおい、あるいは孫だと、容易になるかもしれません。

・話し手の了解がないまま聞いた内容を他人に話すと、大切な信頼関係が崩れます。

 最後は、話し手が気持ちを切り替えられるように、「お茶にしましょうか?」「そろそろ買い物の時間ですね?」などの言葉をかけて、過去から現実に戻れるようにします。

「過去」は「今」を支え、「未来」をつくる

 繰り返し語られる思い出には、その人にとって「人生の意味」のような、大切な事柄が含まれている可能性があります。その思い出こそが、年を重ねたその人の「今」を支える大きな力になるのです。

 回想法は、話し手の高齢者だけでなく、聞き手にとっても明日を生きる力を育むものだと私は思います。

 仕事柄、多くの方々の話を伺ってきました。一つとして同じ人生はなく、一人ひとりの物語から、私はたくさんのことを学んできました。

 現在、私たちが当たり前のように享受している生活――戦争がないことや男女が平等に仕事ができる、食べ物が豊かにあることなど――は、先輩方の努力の積み重ねのたまものであると、つくづく感じます。

 その方たちに、私たちは、ご恩返しができているでしょうか、その社会を作ってきた高齢者が長寿でいることを喜ぶ社会になっているでしょうか。

 過去は思い出を楽しむためだけにあるのではありません。高齢者は過去を振り返ることで、私たちはそれを聞くことで、今をより良いものにし、さらに良い未来をつくっていくのだと思います。(宮本典子 臨床心理士)

(イラスト:西島秀慎)

*「いちばん未来のシニアのきもち」は今回で終了します。

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宮本典子(みやもと のりこ)

 慶成会老年学研究所主任研究員。 臨床心理士。

 聖心女子大学文学部歴史社会学科人間関係(現人間関係学科)卒業。

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 主に認知症高齢者、高齢期のうつ病の心理療法及び介護家族の心のケアにかかわる。自宅で暮らす高齢者や認知症の人を対象に、情緒の安定や認知機能の低下予防をめざす心理療法プログラム「ユリの木会」を運営している。共著に「認知症と診断されたあなたへ」(医学書院)、編著に「いちばん未来のアイデアブック」(木楽舎)がある。

慶成会老年学研究所

 高齢社会に関する心理学的、医学的臨床、研究、及び教育・研修を行う研究所として、1988年に設立。現在、心理学の専門家によって、高齢者と家族を対象にしたカウンセリング、専門職や一般企業への教育・研修と、高齢者と高齢社会に関する学際的な研究を行っている。

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1件 のコメント

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誰もがふるさとを持っている

四朗

隣の市に引っ越して、老人会に入れて貰った。しかし、月1回の懇親会は、期待を裏切った。会長の挨拶、冷たいお弁当、余興?はビンゴ、最後はカラオケ、歌...

隣の市に引っ越して、老人会に入れて貰った。しかし、月1回の懇親会は、期待を裏切った。会長の挨拶、冷たいお弁当、余興?はビンゴ、最後はカラオケ、歌が始まるとおしゃべり、有志が三~四人歌って散会。ある時、私にカラオケを歌えといわれた。私は迷わず「ふるさと」を選び、おしゃべりしている会員に話しかけてた。「声は出ますか、私の声を超える大きな声を出してみませんか」。「♪大きな歌だよ」と一小節を歌う。きょとんとしている人に、「私と同じように声を出してください。♪大きな歌だよ」「大きな歌だよ」「今のは、小さな歌だよでしょ.もっと大きく.♪大きな歌だよ」「大きな歌だよ」「大きく聞こえました、さあ次、♪あの山の向こうから」「あの山の向こうから」「その調子、♪聞こえてくるだろう」・・・。「♪大きな空だよ、お日様が笑ってる、僕らを見つめる、大きな空だよ」。十分間の歌声は、皆さんを笑顔にした。そして、童謡唱歌を歌う会が、発足することになった.毎月第二火曜日、歌謡会と命名。
「ふるさと」を歌ったあと、Aさんのふるさとはどこですか?、と聞いた。奥多摩湖の湖底に沈んだ小河内村でした。夕日に輝く、柿がみごとでした。涙ぐむ彼女。Bさんのふるさとは、あの神戸でした。伴奏者も見つかり、今年で八年目を迎えます。

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