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知ってる? 予防接種(下) 「肺炎球菌」 高齢者に助成
「今日も、肺炎にかかった患者さんが見えましたよ」
山口市の「やまがた循環器内科クリニック」を訪ねると、院長の 山縣 俊彦さん(54)がカルテをめくってそう言った。1か月前に38度台の高熱やせきなどの症状で受診した70歳代の男性。レントゲン検査などで肺炎と診断し、通院で治療を続けた。この日、再度レントゲンを撮ると肺の炎症は消えていたという。
「この患者さんは肺炎球菌ワクチンを接種していなかった。全ての肺炎が防げるわけではないが、接種していれば予防できたかもしれない」と山縣さんは話す。
肺炎は、細菌やウイルスなどが肺に入り込んで起きる。抵抗力の弱い高齢者は感染しやすく、重症化して死亡することも多い。高齢者の肺炎の約3割は肺炎球菌によるものとされる。2014年10月から、予防接種法に基づく肺炎球菌ワクチンの定期接種が始まった。
今年度までは経過措置中で、対象者は年齢によって決められている。「年度内に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる人」と、60歳から65歳未満で所定の障害がある人だ。接種費用は8000円前後だが、一部は公費で助成される。自己負担額は住んでいる市町村ごとに異なり、2000~5000円程度。市町村は対象者にはがきなどで周知しているが、接種率は14年度38・3%、15年度33・5%にとどまる。
山口市は、市医師会などが働きかけたことにより、13年5月から独自の助成制度を導入した。定期接種の自己負担額は2780円。これとは別に、70歳以上の市民が任意接種をする場合なども、3000円を助成する。はがきでの通知にも力を入れ、市内では昨年度までに65歳以上の人の約半数がワクチンの接種を済ませた。
市健康増進課の担当者は「肺炎が原因で亡くなる高齢者は多い。制度を利用して感染や重症化を防いでもらいたい」と話す。
このシリーズは堀家路代が担当しました。
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