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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

コラム

日本の視覚障害者は少なすぎる?…厳しい認定基準への疑問

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福岡・久山町での研究データが示す「実態」

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 そもそも、視覚障害の認定基準だけが厳しいのでしょうか? ほかの障害を持っている人たちの状況が気になります。

 障害者全体の数を、米英のデータと比べてみることにします。

 米国では「身体」「精神」「知的障害」をすべて含めると5700万人と推定されており、人口の5人に1人です。英国でも20%超との推計があります。

 一方、厚生労働省が今春、発表した障害者数は、人口の約7%相当の推計936万6000人。このうち、身体障害者手帳など何らかの障害者手帳を持つ認定者は、同4%相当の推計559万4000人です。

 障害者の基準は国により異なると思われますが、日本では少なめに数えられているように見えます。

 ここで、福岡県久山町での研究データを示しましょう。日本におけるひとつの平均的な生活環境を持つ地域で、九州大学が生活習慣病の実態解明などを狙い、長期にわたり住民の健康状態を調べています。世界的に知られる信頼性の高い研究です。この研究では、住民の20.1%が障害を持つとの結果が出ています。英米の推計値とほぼ一致します。

 英米と医学レベルが同等なら、障害者の人数はほぼ同じであると納得できるので、日本では本来、障害を抱える人たちの5分の1程度しか認定されていないことがわかります。

 そうなると、本来の10分の1の人数しか認定されていないと考えられる視覚障害者については、障害者全体と比較しても、基準が厳しいと言えます。

見えづらさを抱える人たち…認定基準の緩和を

 ヒトの脳に入る外界からの情報の90%近くは、視覚から入ってくるというのは歴然たる科学的事実です。視覚は、人間が生存してゆくのに「最も」といっていいぐらい必要な感覚なのに、こんなに厳しい基準だったとは、私も今回調べるまで気づきませんでした。

 せめて、視覚障害を他の障害なみに、今の2倍くらいまで認める基準に改めるべきでしょう。

 現状では、視覚障害者だけが、あまりにも不平等ではないでしょうか。

 見えづらさを抱えて公的なサービスを受けられずに不自由な暮らしを送っている人たちはいったいどのぐらいいるのでしょうか? 米英のように、国は推計レベルでも把握しているのでしょうか? 私が調べた限り、そのような統計数字はありませんでした。

 存在を把握していない限りは、対応は始まらないのです。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」、「健康は眼に聞け」「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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