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[真瀬樹里さん]亡き母を思い前向きに

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[真瀬樹里さん]亡き母を思い前向きに

撮影・園田寛志郎

 30歳を過ぎたある日、号泣しながら母(女優・野際陽子さん=昨年6月死去)に感情をぶつけたことがあります。きっかけはささいな口論でした。いつもならば、私が泣いてケンカはおしまい。でも、その日は気持ちが収まりませんでした。

 母は、一人娘の私を子どもの頃から溺愛する一方、教育熱心でしつけに厳しい人でした。いつも、「笑顔でいなさい」と言われるので、弱音を吐いたり、甘えたりできません。役者になりたがる私に対し、「高校を卒業するまでは、絶対に芸能活動は認めない」と言い、思春期には、将来のことで毎日のように言い争いました。

 私が大人になってからも、表面上は仲の良い母娘でしたが、本音で話せず、壁を感じていました。母も、悩みがちな娘にどう接してよいか、分からなかったのかもしれません。

 「否定せずにただ話を聞いて、抱きしめてほしかった」。あの日、30年分の思いを泣きながらぶちまけると、母は大きなショックを受け、泣きながら「ごめんね」と謝りました。母娘の関係は、その日を境にがらりと変わりました。私は何でも母に相談し、甘えるようになりました。

 今月、母の一周忌を迎えます。まだ受け止め切れていませんが、しんどいこともユーモアに変えていた母のことを思い出し、日々、前向きに生きたいと思っています。(粂文野)

 ◇ まなせ・じゅり  女優。43歳。東京都出身。5月に「母、野際陽子 81年のシナリオ」(朝日新聞出版)が出版された。

 (2018年6月12日 読売新聞朝刊掲載)

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