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心療眼科医・若倉雅登のひとりごと

医療・健康・介護のコラム

失明、見えづらさ…地球レベルで視覚障害を考える時代

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 「世界の失明者 2050年までに3倍」

 昨年8月、英国BBCニュースがそう伝えました。

 英国アングリア・ラスキン大学が英医学誌「THE LANCET Global Health」に報告した研究の成果です。

2050年には推計3倍に…世界の失明者数

失明、見えづらさ…地球レベルで視覚障害を考える時代

 この研究では世界の失明者数を推計しました。2015年現在は人口の0.5%弱に相当する3600万人ですが、資金を投入して治療状況が改善されない場合は、2050年には1億1500万人に増えるというのです。

 地域別でみると、特に多いのは南アジア、東アジア、サハラ砂漠以南のアフリカの一部だそうです。

 さらに、完全に失明していないけれど見えづらさを抱えるという、中等度から重度の視覚障害を持つ人数も推計しています。こちらも、現在の2億人以上から、2050年までには5億5000万人以上に増えるという驚くべき結果が示されました。

 増加の背景については、開発途上国では医療の効果がすみずみまで行きわたっていないことに加え、世界の人口の増加と、平均寿命が延びていることもあると指摘しています。

開発途上国での眼科医療支援…日本の団体などの取り組み

 開発途上国については、衛生面の改善や、眼鏡など矯正器具の普及、さらには診断や手術を含めた医療が行き届く必要があることは、従来から強く訴えられてきました。

 日本でもNPO法人「アジア失明予防の会」(木下茂理事長)や、有志の眼科医がベトナム、ラオス、ミャンマー、ネパールなどへ出かけています。診断用設備や手術顕微鏡を含めた手術器具を持ちこんで、実際に白内障手術を行ったり、医療器具の寄贈を行ったりしています。

 白内障は、開発途上国では今でも失明の主な原因になっています。失明を防ぐことは、個々人の生活の質に対してだけでなく、社会全体にも良い効果があります。途上国での失明予防は、投資収益率が高い取り組みであり、日本の支援は意義深いと思います。

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201505_第4回「読売医療サロン」_若倉

若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任。15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。「医者で苦労する人、しない人 心療眼科医が本音で伝える患者学」、「絶望からはじまる患者力」(以上春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社)、医療小説「茅花流しの診療所」、「蓮花谷話譚」(以上青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半は講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組む。

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